曲波(読み)きょくは

日本大百科全書(ニッポニカ) 「曲波」の意味・わかりやすい解説

曲波
きょくは / チュイポー
(1923―2002)

中国の作家。山東(さんとう/シャントン)省に生まれ、16歳で八路軍に参加。文工隊員として軍の慰問および解放区での宣伝工作に従事した。翌年中国共産党に入党。44年膠東(こうとう)軍区前線報社記者。日中戦争終了後、東北(旧満州)の解放戦に参加、1946年冬、黒竜江(こくりゅうこう/ヘイロンチヤン)・吉林(きつりん/チーリン)両省にまたがる山岳地帯で国民党系匪賊(ひぞく)集団の掃討作戦が展開されたときには、遊撃分遣隊の隊長として零下38℃から40℃の厳寒雪原樹海転戦。そのときの体験をもとに書き下したのが長編『林海雪原(りんかいせつげん)』(1956年8月完成)である。中国の伝統的小説の手法を踏まえたこの作品は、その大衆性によって多くの読者を得た。文化大革命中は厳しい迫害を受け、78年に復権。79年、中国作家協会第3期理事会理事。この年、抗日戦線初期の山東省沿海地区での農民の反日蜂起を描いた長編小説『橋隆飆(きょうりゅうひょう)』(タイトルの「飆」は、正確には飆の「犬」のかわりに「火」を書く。飆の俗字でいずれも「つむじかぜ」を意味する語)を発表した。

立間祥介

『飯塚朗訳『中国現代文学選集10・11 林海雪原』(1962・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曲波」の意味・わかりやすい解説

曲波
きょくは
Qu Bo

[生]1923
中国の小説家。山東省黄県の人。小学校を卒業しただけで 16歳から八路軍に参加,演劇活動にも従事したが 1950年負傷して除隊,工場で働きながら軍隊時代の体験をもとに長編小説『林海雪原』 (1957) を発表した。これは抗日戦直後の国民党軍との内戦を黒竜江,吉林地方の山岳部を舞台にして描いたもので,好評を得て講談歌劇にも翻案脚色された。文化大革命によって圧迫を受けたが,四人組批判のなかで,『青春の歌』の楊沫らとともに再評価され,77年 12月の在京文学者座談会に出席して健在ぶりをみせた。作品はほかに『口争い』 (58) ,『招かれざる客』 (61) など。

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