月経開始の数日前に抑うつ感や不安感が極度に強くなる状態。PMDDと略称される。月経前に情緒が不安定になったり、いらいらしたりするといったことは、2割から5割の女性が体験しているといわれているが、そのために強い精神的苦痛や生活への支障が1年以上続く場合に月経前不快気分障害と診断される。
月経前不快気分障害は月経のある女性の3~8%が体験していて、月経周期後半の黄体期の最後の週に定期的に現れ、強い抑うつ気分や不安感、不安定な情緒、興味の減退などの症状が現れ、月経が始まって2、3日で消え始める。一般に、10代から20代にかけて発症し、徐々に症状が重くなり、閉経とともに症状がなくなる。なお、以前にうつ病や双極性障害などの気分障害や不安障害にかかったことのある女性は、月経前不快気分障害にかかりやすくなる。
治療は、軽症の場合には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物療法、重症の場合には抗うつ薬に加えて運動療法を行ったり、利尿剤または非ステロイド系鎮痛消炎剤を用いて身体の痛み、膨満、水分貯留によるむくみ(水腫(すいしゅ))を取ったりするようにする。このほかに、食事療法としては、カルシウムを摂取し、アルコール、カフェイン、塩、単純糖質、精製糖を制限するように勧める。
[大野 裕 2020年7月21日]