月経前3~10日(黄体期)の間続く精神的・身体的症状で、月経開始とともに減退ないしは消失するもの。PMSと略称される。
精神的症状としては、いらいら、抑うつ、怒りっぽくなる、落ち着きがない状態などが多くみられ、身体的症状としては下腹部痛や膨満感、頭重感・頭痛、腰痛、乳房痛、のぼせ、むくみなど、さまざまな心身の不調が知られる。これらのうち精神症状が主で、その症状が強い場合はとくに「月経前不快気分障害」(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)とよばれる。
原因には諸説あり十分に解明されていないものの、月経周期に伴う女性ホルモンの変動が関与していると考えられている。月経のある幅広い年齢層の女性に偏りなく発症するが、思春期で頻度が高いとの報告もある。また、生活習慣や就業の有無などとはほとんど関係がないとされる。日本においては生殖年齢女性の70~80%で月経前に何らかの症状があり、さらに、社会生活に困難を伴うほどの症状を生じる女性の割合は5.4%と報告されている。
診断にはアメリカ産婦人科学会の診断基準が用いられており、過去3回の連続した月経周期のそれぞれにおける月経前5日間に、情緒的および身体的症状(それらは月経開始後4日以内に解消し、少なくとも13日目まで再発しない)のうち少なくとも一つが存在することとされている。
治療としては、カウンセリング・生活指導、薬物療法(利尿薬、精神安定剤、漢方薬、低用量ピル等)などが行われる。
[編集部 2019年3月20日]
月経異常に属する一つの症候群。月経前の症状が異常に強い場合で,月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失する。月経前緊張症premenstrual tensionともいわれる。月経前には,一般の健康人でも,月経開始数日前から種々な症状,すなわち軽度の違和感,精神神経過敏,下腹部や腰部の重圧感や不快感がある程度みられるが,日常生活に支障をきたすくらい症状が強い場合は病的で,月経前症候群である。その症状は種々であるが,神経質,感情の不安定,興奮,抑うつ,不安,不機嫌,記憶力や思考力の減退,眠気などの精神的症状,乳房痛や種々な乳房の症状(緊張感,過敏など),下腹部の膨満感,緊張感,重圧感,疼痛などがみられることが多い。また,浮腫と体重増加がみられることがある。片頭痛を含めたすべての頭痛は約25%の婦人が訴える。原因は水分の体内貯留に基づくものと考えられているが,詳細は不明である。精神的ストレスなどの種々な因子が発症に関係している。治療法としては,衛生的生活,不安・精神的ストレスの除去のほかに,水分と塩分の制限,利尿剤の月経前投与,精神安定剤の投与や,排卵抑制などがある。
執筆者:加藤 順三
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…これらの症状は生理的なものであるが,症状が異常に強く,臥床を必要とし,日常生活が妨げられる場合には,病的で,月経困難症と考えられるべきである。また月経前にみられる病的なものを月経前症候群という。 月経周期の中間のころにみられる排卵期に,比較的規則正しく下腹痛を自覚することがある。…
…これは月経困難症dysmenorrheaといわれるが,これには二つのものが含まれる。一つは月経開始と同時に発症するもので,これを狭義の月経困難症といい,もう一つは月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失するもので,月経前症候群という。
[代償性月経]
まれに無月経の婦人で,鼻粘膜など子宮以外の部位に,周期的な出血が毎月1回みられることがあるが,これを代償性月経vicarious menstruationという。…
※「月経前症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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