有馬地誌(読み)ありまちし

日本歴史地名大系 「有馬地誌」の解説

有馬地誌
ありまちし

一冊

別称 摂州有馬地誌・摂津州有馬地誌・有馬志・有馬談 黒川道祐著

成立 寛文四年自序 刊年不明

版本 杏雨書屋ほか

解説 広島藩の儒医だった黒川道祐(本名玄逸)漢文で記した有馬温泉(湯山)およびその近辺の地誌。巻頭の自序によると、道祐は藩侯の供で寛文四年五月有馬温泉を訪れて数日滞在し、この間に有馬の山川寺社・古跡をことごとく訪ねるとともに、温湯の出所や効能を調査して医術の面でも得るところがあり、これらのことを一冊の書物にまとめたといっている。記述内容は、有馬の地誌概要と温湯についての説明に始まり、以下、山川門(杉谷・功地川・猪名野・地獄谷など)、土産門(巻筆・色紙・染楊枝・竹器・松茸など)、寺観門(温泉寺・施薬院・蘭若院など)、祠廟門(湯山権現・三輪明神・鹿舌明神など)、墳墓門(平清盛墓・慈心坊尊慧墓・阿闍梨円仁墓)の各部門に分けて記述している。道祐は林羅山(道春)儒学を、堀杏庵(正意)に医学を学んだが、双方の師匠にはいずれも有馬温泉に関する著述があり、林羅山は元和七年に「摂州有馬温湯記」を、堀杏庵は寛永四年に「摂州有馬温泉記」を著しているので、道祐の著書にもその影響があったのではないかと思われる。なお林羅山の「摂州有馬温湯記」と堀杏庵の「摂州有馬温泉記」は、二人の著書を合綴する形で「有馬温湯記」と題し寛文一一年に一冊の版本として公刊された。

活字本 昭和五〇年刊有馬地誌集(近世文学資料類従「古版地誌編」二一)所収

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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