改訂新版 世界大百科事典 「朝島遺跡」の意味・わかりやすい解説
朝島遺跡 (ちょうとういせき)
Chodo-yujǒk
韓国,慶尚南道の釜山直轄市影島区東三洞にある,櫛目文土器(新石器)時代から原三国(初期鉄器,金海)時代にわたる貝塚と墳墓の遺跡。遺跡は,釜山港内の朝島の西岸の2ヵ所に位置し,1973年に発掘された。北側の第Ⅰ地区では,原三国時代の貝層を主体として,三つの層位が堆積していた。最下層のⅢ層からは,褐色の無文土器を主として,赤褐色・軟質の陶質土器も出土し,磨製石器などを伴出している。また野外用の炉跡と推定される焼土と配石がそれぞれ1ヵ所ずつ見つかっている。Ⅱ層は貝殻層で,赤褐色の無文系土器を主体として,灰青色・硬質の陶質土器なども出土する。Ⅰ層では,無文土器もわずかに含むが,原三国時代の灰青色・硬質の陶質土器が多量に出土し,鉄器や骨角器が共伴している。貝殻はカキを主体として21種以上にわたり,獣骨には鹿が多い。また,原三国時代の配石墓ないしは土壙墓が発見され,仰臥伸展葬の遺体は,碧玉製管玉や水晶製そろばん玉で飾られ,鉄剣,鉄鏃,骨鏃を副葬していた。そのほか,本遺跡では弥生土器,籾殻圧痕土器,卜骨など特異な遺物の検出も注目される。なお,第Ⅰ地区の南西方約60mの第Ⅱ地区には,櫛目文土器時代の貝塚がある。
執筆者:西谷 正
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