日本大百科全書(ニッポニカ) 「村内婚」の意味・わかりやすい解説
村内婚
そんないこん
同一村落内で行われる婚姻をいい、村外婚と相対する。かつての村(むら)は独立性、封鎖性が強く、それが婚姻にも反映して村内婚が多かった。村の男女は少年期から青年期にかけてツレ、ドシ、朋輩(ほうばい)などとよばれる同輩集団を組み、集団同士の交際を展開した。土地によっては民家の一室を借りて寝宿、娘宿とし、そこを根拠に交流するものもあった。こうした交際から恋愛が生まれ、結婚へと進むのが古習であった。「よばい」も元来はこのような環境における求婚手段であった。ただ他村の若者が村の娘に近づくことは激しく拒んだ。したがって古風な村内婚では大人たちの介入が認められず、婚約・結納(ゆいのう)・祝言(しゅうげん)なども簡単に済ましたり省略したりした。婿入り婚(妻所(さいしょ)婚)も村内婚でなければ行いえなかった。また結婚が当人同士の意思によったので離婚も自由で、例も少なくなかった。ただし郷士(ごうし)や豪農の子女は例外で若者の仲間に加わらず、同程度の家格を求めて村外婚をする風であった。
[竹田 旦]