精選版 日本国語大辞典 「婚約」の意味・読み・例文・類語
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将来結婚をしようという約束であるが、これについては民法に規定がなく、判例法によって規制されている。婚約は結納(ゆいのう)の取り交わしなどの儀式によって成立することが多いが、そのような儀式がなくても有効に成立する。婚約どおりに婚姻が成立するか、または両方の合意で婚約が解消される場合には問題はないが、どちらかが一方的に婚約を破棄した場合に問題がおこる。婚姻はあくまで当事者の自由な意思で成立させるべきであるから、心変わりして婚姻する意思がなくなった者を、裁判所に訴えて強制的に婚姻させることは認められない。しかし、正当な理由がなく婚約を破棄した者は、相手方の被った財産的あるいは精神的な損害に対し賠償をする義務がある。また、結納は将来の婚姻を目的として渡される金銭や品物であるから、婚約が解消されたときは、合意による解消であるか、一方的な解消であるかを問わず、返還しなければならない。なお、判例法で「婚姻予約」ということばを用いるときは、ここでいう婚約をさすこともあるが、普通、内縁を意味することが多い。
[高橋康之・野澤正充]
日本では婚約に法的手続をまったく要しないから、すべては慣行に従い、その実態はきわめて多様である。従来はまったく未知の間柄の男女間に婚姻の交渉が開始され、それがむしろ通例だったので、いきおい媒介者(仲人(なこうど))の介在が生じた。また当人同士の合意よりむしろ「家」(親)相互の了解容認が優先もした。それゆえ婚約に至る両家間の交渉過程も幾段階かに分かれて、かなり手のこんだ形を呈したが、およその経過は次のようである。(1)仲介者による双方への内交渉(橋かけ、下話の類)、(2)双方の内々の聞き合わせ、根聞(ねぎき)などの慣行、(3)見合い(仲人による当事者対面の演出といった通例の見合い慣行は都会中心におこった新しい傾向で、婿方からの一方的面接・観察〈嫁見〉が一般農村ではむしろ古くから行われ、まったくそれを欠くことさえあった)、(4)口約束(見合いの返事、ときには内交渉から直接の合意)という順序で「内諾」が得られ、(5)婚約儀礼に進むことになる。慣行的な婚約式は「手じめ・酒たて・きめ酒・すみ酒」などといい、仲人が婿方から贈る酒肴(しゅこう)を携えて嫁方に出向いて酒宴を張り、その残り酒を婿方に持ち帰ることで完了した。そして「嫁入り」と「婚礼」が合体した「嫁入り婚」の方式が一般化すると、(6)結納、(7)婚礼の日取り決めという経過も婚約手続に繰り込まれ、あるいは婚約式とそれは合体もした。そしてときには口約束→婚約式というだけの簡素な形もなお残ったのである。
一方、村内の若者仲間、娘仲間の交際を媒介に、既知の男女間の直接交渉(求愛→口約束)で婚約が成立し、それが婿の嫁方への正式披露(婿入り)で結婚が成立する形につながることも、古くは広くみられ、多くは「村内婚」に随伴するものでもあった。「手じるし」などという婚約の贈り物を、当人同士が取り交わす慣習もそこにはみられた。つまり、婿入り婚(村内婚)、嫁入り婚(村外婚)といった婚姻方式の変遷のまま、婚約手続も多彩に分化し、あるいは簡素に運ばれることになったわけで、今日の見合い結婚と恋愛結婚という、二元方式における婚約手続にもその形は残っている。
[竹内利美]
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…双方の親たちの合意で幼少の時から婚約を結んでおくこと,またはその当人どうしをいう。広く婚約者をいう場合もある。…
…大名の縁談の進め方は,幕府の旗本である先手頭(さきてがしら)を仲介にしている例が多く,さらに実際的な交渉は御用商人が進めていることもある。結婚費用は,江戸時代初期から華美で多大の出費となったので幕府も規制したが,家綱将軍の命で加賀藩主前田綱紀と会津藩主保科正之の娘が婚約したとき,結婚費用として1658年(万治1)将軍より1万両が正之に与えられた例からも出費がうかがえよう。一方下級武士は,幕府や藩の統制を受けることなく,武士同士の婚姻は比較的自由であったとみられる。…
…婚約の意味をもって金品などを男方から女方へ贈る儀礼,あるいはその金品のことをいう。語義からは,ユイノモノすなわち家と家とが姻戚関係を新たにむすぶための共同飲食,またはその酒肴のこととされる。…
※「婚約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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