東大ポポロ事件(読み)とうだいポポロじけん

大学事典 「東大ポポロ事件」の解説

東大ポポロ事件
とうだいポポロじけん

大学への警察官の立入りをめぐって起こった刑事事件。大学自治学問の自由に関する最高裁の初めての司法判断が下された。1952年(昭和27)2月,東京大学構内で大学公認の学生団体「ポポロ劇団」が松川事件をテーマとした演劇を上演した際,観客の中に私服警官数人がまぎれ込んでいるのを学生が発見し,身柄を拘束して警察手帳を奪った行為が暴行罪として起訴された。一審と二審では,被告学生の行為は大学の自治を守るためのもので正当であるとして無罪とされた。検察が上告し最高裁で争われ,判決では「大学の学問の自由と自治は,(中略)直接には教授その他の研究者の研究,その結果の発表,研究結果の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味する」と大学の自治に関する見解を表明したが,「本件集会は,(中略)実社会の政治的社会的活動であり,かつ公開の集会またはこれに準ずるものであつて,(中略)大学の学問の自由と自治を犯すものではない」として審理地裁に差し戻した(昭和38年5月22日最高裁大法廷判決)。判決により,大学構内を一種治外法権の場とみなすことは否定されたが,警察は1960年代末の大学紛争高揚期まで,大学構内への警察官の立入りにきわめて慎重な姿勢をとることになった。
著者: 斉藤泰雄

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報