松田郷(読み)まつだごう

日本歴史地名大系 「松田郷」の解説

松田郷
まつだごう

和名抄」所載の郷で、訓を欠く。「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条の松田駅にあたる。「大日本地名辞書」は現西白河郡ひがし釜子かまことする。母畑ぼばた地区開拓事業のため現東村上野出島かみのでじまの六遺跡(佐平林・板倉前B・達中久保・西原・谷地前C・赤根久保)二万一五〇〇平方メートルが発掘され、掘立柱建物跡六二棟・竪穴住居跡一六五軒(うち奈良時代四〇・平安時代八三)が検出された。出土遺物は円面硯・転用硯・帯金具・石帯(石製巡方)・耳皿・鉄刀・刀子・鉄鏃(うち有頸雁股一)・鎌・砥石・鉄製紡錘車がある。


松田郷
まつだごう

現在の松田町一帯の古名。平安時代末には波多野氏の所領となっていて、「吾妻鏡」治承四年(一一八〇)一〇月一七日条に、源頼朝に敵対した波多野義常が松田郷で自殺したとみえ、一一月二〇日条では義常の妻の兄弟にあたる大庭景義が当郷を預けられた。義常の父義通の妹は源義朝と結ばれて朝長を産み、その縁で朝長は郷内に「松田亭」とよばれる邸宅をもっていた。同年一〇月、頼朝は中村宗平に命じて修理させておいたこの邸宅に入った。主屋に付属していた侍の柱間が二五もある萱葺の大邸宅であった(同書同年一〇月一八日・二五日条)

松田郷は波多野義常の遺児有常の成長後その手に返されたらしく、有常の子孫は松田氏と名乗る武士団を形成した。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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