朝日日本歴史人物事典 「栄松斎長喜」の解説
栄松斎長喜
江戸後期の浮世絵師。寛政8,9(1796,97)年ごろには一時子興の画名を用いているが,鳥山石燕門下の俳人子興と同一人とする説は今日では疑問視されている。天明(1781~89)後期から文化(1804~18)前期にかけて,黄表紙・合巻などの草双紙や読本の挿絵を数多く担当したが,寛政(1789~1801)中期には四季の美人や京坂の芸妓などを描いた雲母摺の錦絵も制作した。長喜の挿絵は流麗な描線ですっきりとしており,錦絵の美人画は歌麿風をベースとしながらも,肩幅の極端に狭い肉体と,少女のような可憐さを漂わせた容貌が特徴である。<参考文献>菊地貞夫「歌麿/栄之」(『浮世絵大系』6巻)
(大久保純一)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報