株を守りて兎を待つ(読み)かぶをまもりてうさぎをまつ

故事成語を知る辞典 「株を守りて兎を待つ」の解説

株を守りて兎を待つ

たまたまうまくいったことに味をしめて、同じようにしてもう一度、成功しようとするたとえ。また、古くからの習慣にこだわって、時代に合わせることを知らぬたとえ。

[使用例] あつものりてなますを吹くは、株を守つて兎を待つと、等しく一様の大律に支配せらる[夏目漱石虞美人草|1907]

[使用例] 彼女は、その途端ふと学校で習った「株を守って兎を待つ」と云う熟語を思い出した。約束もしない人が、うして一定の時日に、一定の場所に来ることがあるだろう[菊池寛真珠夫人|1920]

[由来] 「韓非子」に載っている話から。春秋時代の中国でのこと。ある日、そうという国の農夫が畑を耕していると、近くにあった木の切り株に、一匹のウサギが走って来てぶつかり、死んでしまいました。苦労もなくウサギを手に入れた彼は、以来、農具を捨ててしまい、またウサギがぶつかるのを待ってその切り株を見守っていました。しかし、ウサギは一向に手に入らず、国中の笑い者になったということです。

[解説] ❶「韓非子」では、昔の聖王たちの政治を現在の社会に復活させよう、と主張する人々を批判する、たとえ話になっています。昔の政治がうまくいったのは、ウサギが切り株にぶつかったようなもの。時代が変わっているのにそれを復活させようとするのは、ウサギがもう一度、切り株にぶつかるのを待つようなものだ、というわけです。❷現在では、昔と今の時代の違いというよりは、偶然うまくいったのを必然だと勘違いする愚かさを指して用いられます。

〔異形〕くいぜを守りて兎を待つ/株を守る/くいぜを守る/守株しゅしゅ

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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