日本大百科全書(ニッポニカ) 「株価変動率指数」の意味・わかりやすい解説
株価変動率指数
かぶかへんどうりつしすう
Volatility Index
投資家が先行きの株式相場の変動幅(振れ幅、ボラティリティー)をどう予測しているかを表す指標。数値が高いほど、株式相場が大きく変動するとみていることを示す。英語のVolatility Index(VI)から「ボラティリティー・インデックス」「ボラティリティー指数」「VIX(ビックス)」とよばれることもある。株価変動率指数が20の場合、「今後1年間に約7割の確率で株価が上下20%の範囲で変動する」と投資家がみていることを示す。通常、株価変動率指数は10~20程度で推移するが、20を超えると不安心理が高まっていると解釈される。これは、なんらかのきっかけで、売買注文がどちらかに偏ると、値動きが一方的になり、株価変動率指数が高まるためである。とくに株価暴落時には不安心理を反映して急上昇する傾向があるため「恐怖指数」ともいわれる。代表的な株価変動率指数として、アメリカのS&P500種株価指数を対象とした「VIX指数」があるほか、日経平均株価の変動率を示す「日経平均ボラティリティー・インデックス」(2010年11月公表開始)、ユーロ圏のおもな株価STOXX(ストックス)50を対象とした「Vストックス指数」がある。
アメリカのVIX指数はリーマン・ショック時(2008年10月24日)に89.53の最高値をつけ、アメリカ同時多発テロ時(2001年9月21日)にも49.35まで上昇した。日経平均VIも東日本大震災後(2011年3月15日)には69.88まで上昇した。株価変動率指数に連動し、機械的に株売りを指示する「リスク・パリティRisk Parity」とよばれる手法をとる投資ファンドが存在するため、株価変動率指数の急上昇は株価暴落に拍車をかけるとされている。なおリーマン・ショック後の2010年以降、アメリカのVIX指数や日経平均VIは歴史的な低水準を長期にわたって続けており、内外の市場ではこの反動として金融危機の再来に警鐘を鳴らす投資家やエコノミストが増えている。
[矢野 武 2019年7月19日]