原子核が一つ,あるいは複数の粒子またはγ線を放射してその状態をかえる現象.したがって核崩壊は,崩壊する核種(Xで表す)と,それのエネルギー条件,スピン,パリティなどの物理量を含めてはじめの状態(iで表す)を明らかにし,次に放射される核,粒子またはγ線など(aで表す)とXの崩壊でできる核(Y)とその状態(f)の諸条件にYとaとの相対的関係を加えて
X(i) → a + Y(f)
または
X(i,a,f)Y
のように表すことができる.X(i)としては,自然に存在する,したがって基底状態にある重い核や各種の核反応により人為的にある励起状態に置かれたいろいろな核が考えられる.aは重い核の自然崩壊においてはα粒子,電子と反中性微子の対,γ線であり,それぞれα崩壊,β崩壊,γ崩壊とよばれる.一方,人為的な核反応による核の場合は,陽子,中性子,重陽子,3H,3He,α粒子,γ線などが含まれる.核分裂におけるaは励起された
A ≅ 72~120
の中重核である.一般にXとaが決まればYが定まり,X(i),a,Y(f)が決まればaとYの相対関係,すなわち,それぞれの運動エネルギーやYに関するaの角運動量などがエネルギー,角運動量,パリティなどの保存則にもとづき定まる.もし,Y(f)の寿命が短く,さらに
Y(f) → Z(g) + b
の崩壊を行うとき,見掛けのうえではX(i)の崩壊にa,bの粒子放射が伴うようにみえる.これは二つの核崩壊が別個に起こったものである.しかし,上記β崩壊では同時に二つの粒子の対が放射される.核崩壊の寿命は数十億年から~10-22 s くらいの非常に広い範囲に及んでいて,崩壊の諸条件からこの寿命を理論的に導くことは,核構造研究の大きな鍵となる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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