日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギー」の意味・わかりやすい解説
ギー
ぎー
ghee
インドで常用されている精製バター。英語のバターオイルにあたる。サンスクリット語ではグリタghritaで、古来食用、薬用に供されてきたほか、いまも灯明や祭壇の供物、火中に投じて炎とする宗教祭儀などに用いられ、古代インドの経典にもよくそれが現れる。とくに宗教的な菜食主義者が食用にできる唯一の動物性脂肪なので、食生活上きわめて重要な地位を占め、インドで生産される牛乳(水牛乳を含む)の約40~43%がギーに加工されている。同じ形の保存性のよいバターオイルが、高温の西南アジアからモンゴルに至る内陸一帯に存在し、その製法はヒツジ、ヤギ、ウシ、スイギュウ、ヤクなどの発酵乳の粗製バターをとろ火で溶解し、水分と微量のタンパク質を除去して、透明なバターオイルの部分をすくい取る。またモンゴルのシャルトスのように、生乳を煮て静置した後に浮上する脂肪の層をすくい上げ、それを加熱して同じように取る製法もある。なお、中国唐代の乳製品の「醍醐(だいご)」が、それにあたることもほぼ定説化しつつある。
[新沼杏二・和仁皓明]