森林評価(読み)しんりんひょうか

改訂新版 世界大百科事典 「森林評価」の意味・わかりやすい解説

森林評価 (しんりんひょうか)

森林のもつ木材生産機能と環境保全機能を評価すること。木材生産機能は林産物の市場財としての価値を評価の対象とする。長期にわたりストックされ,有形固定資産としての財産価値および成熟した後は販売可能な棚卸資産としての価値をもっている。長期の育林生産過程の終りに林木の形で生産物が得られ,伐採搬出による素材生産過程を経て市場で価値が実現される。この反面,長期間ストックされる過程では,水源涵養(かんよう)機能,洪水防止機能,山地災害防止機能,保健休養機能,気候調節機能,騒音防止機能,生物共存社会の保護機能など環境財としての働きが評価の対象となる。市場財としての評価と環境財としての評価の両側面は別個になされるのではなく,同時に行われることにより,森林資源の価値が定まる。森林資源の市場財的価値を高めるには,森林の生育条件に適した方法で生産することが必要で,そのことは森林資源の環境財としての価値を十分に果たすことによってはじめて実現できる面をもっている。木材が高い価値を実現できるようなマーケティングも必要条件であるが,森林の自然的循環に適合した生育,増殖,伐採を行い,自然条件とのバランスを保った生産を行うことも肝要で,この二つの条件を満足することにより,森林資源の経済財としての評価と環境財としての評価との総和を最大とすることができる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報