概念計画5029(読み)がいねんけいかく5029(英語表記)CONPLAN5029

知恵蔵 「概念計画5029」の解説

概念計画5029

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が体制崩壊し、混乱クーデターなどにより内戦が起きた場合を想定した、アメリカ合衆国と大韓民国(韓国)による軍事概念計画(Concept Plan)。これに対応した具体的な作戦計画(Operation Plan)として「作戦計画5029(OPLAN5029)」も数次にわたって策定され、連合図上演習も繰り返されている。核兵器や重要な軍事施設の運用などを含み、作戦統制権を米国が掌握するという内容だったため、韓国側としては主権を米国に脅かされかねないと懸念していた。このため、永続的発効には至っていなかった。その後、米軍再編の流れもあり作戦権を韓国軍に委譲するなどの方向で修正が進められた。また、OPLAN5029の根拠となる「母体約定」はすでに締結されている。
概念計画5029は、1994年の金日成(キム・イルソン)主席死去や北朝鮮経済の破綻(はたん)に際して、99年当時の金大中(キム・デジュン)政権下の韓国と米国によって策定された。内容的には、北朝鮮の反乱軍による核兵器などの奪取、クーデターや暴動及び内乱の発生、北難民の大量脱北、大規模な自然災害など、体制を動揺させる緊急事態が発生した場合の対応策を想定している。米国からは、より具体的な軍事行動計画として作戦計画(OPLAN)への格上げ盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代に求められたが、親北朝鮮政策である太陽政策を掲げていたことなどから見送られていた。2008年にハンナラ党李明博(イ・ミョンバク)による保守政権が発足したことや、金正日(キム・ジョンイル)総書記の健康悪化により、作戦計画への格上げが合意された。11年の米韓の年次合同軍事演習では、OPLAN5029に基づいて米空母も参加するなど、南北の全面戦争に備えるものとなった。更に、同年12月には金正日総書記が死去したことにより、北朝鮮の政権の行方が不透明となりかねないことなどから、作戦発動が現実味を増してきている。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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