日本大百科全書(ニッポニカ) 「横田順彌」の意味・わかりやすい解説
横田順彌
よこたじゅんや
(1945―2019)
小説家。佐賀県生まれ。法政大学法学部卒業。小学生時代からSF好きで、高校時代に押川春浪(おしかわしゅんろう)の『海底軍艦』を古書店で入手し古典SFに関心を抱く。大学在学中は落語研究会に所属するかたわら、SF同人誌に作品を寄稿。また自らも作家・評論家鏡明(1948― )、作家川又千秋(1948― )らと『SF倶楽部』を創刊する。1970年(昭和45)平井和正の紹介で『少年チャンピオン』誌にショート・ショートを発表。翌1971年『SFマガジン』3月号に短篇「友よ、明日を……」が掲載され、本格的作家活動に入る。1974年同誌に発表した「宇宙ゴミ大戦争」が好評を博し、ユーモア、パロディー、だじゃれ、ナンセンスが渾然一体となった、独自の「ハチャハチャSF」路線を確立。以後他の追随を許さない特異な活動を続けた。また日本古典SF研究の第一人者としても知られる。1973年から1980年にかけて『SFマガジン』誌に連載された「日本SFこてん古典」と評論家會津信吾(1959― )との対談形式による『新・日本SFこてん古典』(1988)の資料的価値は途方もなく高い。この両者はまさに横田順彌にしかできなかった仕事である。會津信吾とはほかにも共著『快男児 押川春浪』(1987)があり、こちらは日本SF大賞を受賞した。押川春浪に代表される古典SFへの関心は、やがて「明治」という時代そのものへの共感に発展し、当時の世相風俗や実在の人物を作中に取り込んだ明治ものSFに結実していく。春浪と友人たちが火星人による帝都破壊の危機に立ち上がる『火星人類の逆襲』(1988)、その続編でコナン・ドイルの『失われた世界』の舞台となったアマゾンの秘境に、チャレンジャー教授と入れ違いに春浪たちが活躍する『人外魔境の秘密』(1991)、ハレー彗星到来時の神隠し事件に挑む幻想ミステリー『星影の伝説』、その続編の短編集『時の幻影館』(ともに1989)、冒険大作『菊花大作戦 冒険秘録』(1994)など地道な創作活動を続けた。また豊富な資料をもとにした明治研究も磨きがかかり『明治不可思議堂』(1995)、『明治バンカラ快人伝』(1996)、『明治はいから文明史』(1997)、『明治おもしろ博覧会』(1998)、『明治ふしぎ写真館』(2000)など次々と発表した。
[関口苑生]
『『時の幻影館』(1989・双葉社)』▽『『菊花大作戦 冒険秘録』(1994・出版芸術社)』▽『『明治はいから文明史』(1997・講談社)』▽『『明治おもしろ博覧会』(1998・西日本新聞社)』▽『『明治ふしぎ写真館』(2000・東京書籍)』▽『『宇宙ゴミ大戦争』(ハヤカワ文庫)』▽『『SF大辞典』(角川文庫)』▽『『火星人類の逆襲』『人外魔境の秘密』(新潮文庫)』▽『『星影の伝説』(徳間文庫)』▽『『明治不可思議堂』『明治バンカラ快人伝』(ちくま文庫)』▽『横田順彌・會津信吾著『快男児 押川春浪』(徳間文庫)』▽『横田順彌・會津信吾著『新・日本SFこてん古典』(徳間文庫)』