管楽器の部分名称。本来歌口とは、和歌の詠みぶり、あるいは和歌を上手に詠むことの意であるが、日本の笛に対しても古くから使われており、文献上は17世紀の天理本狂言『吹取(ふきとり)』、『日葡(にっぽ)辞書』(1603)、浄瑠璃(じょうるり)『牛若千人斬(ぎり)・二』(1679)などに記述がみられる。今日では一般にマウスピースmouthpiece(フランス語でembouchure、ドイツ語でMundstück)の訳語として使われているが、口の使い方によって分類すると次のように説明される。
(1)唇全体をあてる場合。トランペットのようなリップリード楽器や笙(しょう)のようなフリーリード楽器では、いわゆるマウスピースが歌口となり、それを吹管(すいかん)、口管ともいう。
(2)下唇のみをあてる場合。横笛や縦笛では、下唇のあたる部分とエッジの設けられている部分を歌口とし、吹口(ふきぐち)ともよぶ。フルート、尺八などがその代表例。
(3)くわえる場合。リード楽器のうち、クラリネットではリードとベックをあわせた部分、篳篥(ひちりき)やファゴットではリード自体。リコーダーのようなホイッスルフルートでは、くわえた吹口の部分を歌口とするほかに、エッジの設けられた小窓を歌口とする解釈もある。
[川口明子]
…音色に関して,長さの割に太目の管は音も太くて柔らかく,細目なら明るくて鋭い。唇を働きやすくするため入口に装着する歌口(マウスピース。図2)も音色への影響が大きい。…
…これを指してエア・リードなどという。楽器自体は一端(頭部)を閉じた1本の管であって,閉端に近い管壁を切り込んで歌口(うたぐち)という穴をあけてあり,歌口の縁の一部は鋭いナイフ・エッジになっている。歌口のエッジに向けて吹きつける気流の諸条件(流速,断面形,角度等々)がととのえば,気流はエッジの両側(歌口の内外)へと急速にゆれ動くようになり,笛は鳴るのである。…
※「歌口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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