リコーダー(読み)りこーだー(その他表記)recorder 英語

デジタル大辞泉 「リコーダー」の意味・読み・例文・類語

リコーダー(recorder)

リードをもたない、木製・プラスチック製などの縦笛ヨーロッパではバロック時代に広く用いられ、日本では、主に学校教育用楽器として使用されている。ブロックフレーテ

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精選版 日本国語大辞典 「リコーダー」の意味・読み・例文・類語

リコーダー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] recorder ) 縦吹きの指孔のある無簧楽器の一つ。頭部にさしこまれた栓の、せばめられた吹口から息を吹き込んで奏する。明るい柔らかな音色を出し、木製、象牙製、プラスチック製など材質は種々あり、大きさも各種ある。日本では多く初等教育に用いられる。ブロックフレーテ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リコーダー」の意味・わかりやすい解説

リコーダー
りこーだー
recorder 英語
common flute 英語
English flute 英語
Blockflöte ドイツ語
flûte à bec フランス語
flauto diretto イタリア語

リードを用いない気鳴楽器の一種。いわゆる縦型フルートに属し、ブロックフレーテなど多くの名称をもつ。

 西欧諸国では、ルネサンス時代から18世紀中ごろ、とくにバロック時代に非常に愛好され、当時は単にフルートといえばこの楽器をさした。A・スカルラッティ、ビバルディテレマンバッハら多くの作曲家がリコーダーのための作品を書いている。しかし、18世紀中期になると強弱変化の激しい音楽が登場し、強弱の幅が狭いこの楽器は、18世紀の後期ごろからしだいに用いられなくなり、やがて芸術音楽の場から姿を消す。リコーダーの復原および復興は19世紀末になされた。それはイギリスのドルメッチらに負うところが大きく、以後芸術音楽や教育用楽器として広く普及するようになった。近年の名手としては、フランス・ブリュッヘンなどがあげられる。

 現在一般に用いられているリコーダーはバロック時代のものをもとにした形で、バロック型とよばれる。ソプラニーノ(F管、音域はF5~G7)、ソプラノ(C管、C5~D7)、アルトまたはトレブル(F管、ソプラニーノの1オクターブ下)、テナー(C管、ソプラノの1オクターブ下)、ベースまたはバス(F管、アルトの1オクターブ下)、グレートベースまたはコントラバス(C管、テナーの1オクターブ下)の6種あり、順に大型になる。全管とも通常の音域は2オクターブと1全音であるが、指遣いによってさらに高音域を拡大することもできる。材質は木製のものが多いが、学校教育用を中心にプラスチック製の楽器も広く普及している。

 楽器は頭部・中部・足部の3管に分かれ、足部がやや広がった形であるが、内部は下端へ向かってややすぼまる逆円錐(えんすい)形をしている。使用時に組み立てるはめ込み式になっているが、ソプラニーノやソプラノといった小型の楽器は足部管が分かれていないものも多い。頭部管には上端部に吹口、前面に歌口がある。歌口は管を上向きに切り込んで四角い小窓をあけたもので、この斜面と管の内面でエッジができている。管の上端は栓(フィップル)でふさぎ、この栓と内壁に彫られた細長い溝によって気道を形づくる。管の上端と栓の形はくわえやすいようにくちばし形に整えてあり、これが吹口となっている。ただし、ベース以下の大型の楽器では、直接管の上端をくわえると下のほうの指孔に手が届かなくなるため、吹口をつくらずに吹き込み管(クルック)を取り付ける。フルートのようにエッジに直接息を当てるのではなく、気道を通して発音させる仕組みである。中部管には、歌口の側(前面)に6個、背面に1個の指孔がある。背面の指孔は親指で操作し、わずかに開くことによって2オクターブ目以上の音を出しやすくする働きをする。足部管には1個の指孔がある。現代の楽器では前面の7孔のうち下の2孔は、隣接した小さな2個の孔で1個の機能となるよう設計されている。これは、最低音域でも半音が得られるようにするためである。

 なお、インドネシアスリンなどは同じ発音原理の楽器であるが、スリンの場合は気道が管の外壁に沿って設けられており、歌口は背面(奏者側)に設けてある。

[卜田隆嗣]

『H・M・リンデ著、北御門文雄訳『リコーダー演奏の技法』(1980・全音楽譜出版社)』『H・M・リンデ著、矢沢千宜・神谷徹訳『リコーダー・ハンドブック』(1984・音楽之友社)』『E・ハント著、西岡信雄訳『リコーダーとその音楽』(1985・全音楽譜出版社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「リコーダー」の意味・わかりやすい解説

リコーダー
recorder

洋楽の管楽器の一種。エア・リードの笛,つまり広義のフルートに属し,指孔は前面に7,背面に1の計8個。英語の動詞recordに,古くは鳥の〈さえずる〉意味があり,語源かといわれる。縦に構え上端をくわえて吹く。上端は栓をしてあるが,1ヵ所だけ空気の通るすきまをあけ,呼気を近くの歌口に導くようになっている。また不要部を削ってくわえやすくする結果,外観は嘴(くちばし)状をなす。別名ブロックフレーテBlockflöte(ドイツ語)は管端の栓(ブロック)から,フリュート・ア・ベックflûte à bec(フランス語)は嘴(ベック)からきている。西洋音楽でルネサンスからバロックにかけて重用され,当時たんにフルートといえば横笛でなしにこの縦笛を指すのが通例であった。ルネサンス期には単純な1本の円筒管だったが,バロック期には内径が先細りに変わり,外周に装飾的隆起帯がめぐらされ,3部分に分けて作ったものを使用時に継ぎ合わすようになった。古典派以後いったん忘れ去られたが,古楽再認識の波に乗って近年の復興はめざましい。また20世紀の両大戦間にドイツの青少年運動に利用されて以来,教育楽器としての普及が著しい。大小各種あるが,今日普通にはハ調またはヘ調を基調として作る。大衆レベルで普及度抜群のソプラノ(ディスカントとも)はハ調,指孔全閉の最低音を2点ハとし,テナーはそれよりオクターブ低く作る。規準的で独奏曲目も多いアルト(トレブル)はヘ調,最低音は1点ヘ。ベースはアルトよりオクターブ低い。各種とも常用音域は2オクターブと長2度。便宜上ソプラノやベースの譜を実音よりオクターブ低く書く。音質が柔らかいため音高が実際よりオクターブ低いかのように錯覚されやすいことが,17世紀以来いわれている。

 A.ドルメッチらのじみな努力の蓄積により徐々に復興に向かっていたこの笛は,青少年運動によって一気に大衆性を帯びたが同時に問題を生んだ。運動関係者が着目したのは手軽に扱える笛としてであり,ここで歴史的な指孔配置を改めて指使いをわかりやすくしたいわゆるジャーマン・フィンガリングの笛が作られ,普及させられた。しかしこの設計変えによって奏法が楽になるのは,ハ長調やヘ長調の単純な音階や旋律についてであって,実は楽器本来のバランスが崩れ,半音階的変化音は不安定に,嬰種調の演奏は以前よりかえって困難になった。日本の一般初等教育にもこの設計の縦笛が入っている。初歩の一時期の指導の便のみを採るか,楽器本来のあり方に最初から親しませるべきか問題である。しかし,本来的なものを追究しながらの復興も進み,伝統の絶えていた楽器とは思えないほどの盛況をみせている。
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百科事典マイペディア 「リコーダー」の意味・わかりやすい解説

リコーダー

木管楽器の一種。縦吹きのフルート。ブロックフレーテ(ドイツ語),イングリッシュ・フルートともいう。吹口に栓(せん)がつめられ,ここを通った空気が歌口に当たって発音。指孔は前面に7個,背面にオクターブ用1個。16〜18世紀に盛んに用いられたがその後忘れ去られ,19世紀末以来の〈古楽復興〉の気運の中でハープシコードなどとともに復活した。第2次世界大戦後は名手ブリュッヘンらの活躍で面目を一新し,その後も女性奏者M.ペトリ〔1958-〕ら多くの演奏家が輩出。この楽器のための新作も少なからず誕生している。ソプラノ(デスカント),テノール,およびヘ調のアルト(トレブル),バスが一般的。→古楽
→関連項目ピンクージョマンロー

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音楽用語ダス 「リコーダー」の解説

リコーダー[recorder / rec.]

備え付けの吹口を持ったヨーロッパ産の縦笛。音は吹口近くの管壁に抵抗装置を作り、ここで発音された音源を管の中で共鳴させる構造。この「備え付け吹口」では、くちびるを直接当てて吹くフルートのように音の加減が自由にできない。現在のリコーダーはF管とC管の楽器が5種類ある。それぞれ音域によって区別される。ひとつの楽器は2オクターブと2度(14度)を演奏できる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リコーダー」の意味・わかりやすい解説

リコーダー
recorder

縦吹きのフルート属の楽器。中世からバロック期にかけてよく用いられた。 1511年の S.ビルドゥング,35年の S.ガナッシの理論書に構造と奏法に関する記述が残っている。バッハ,ヘンデルの作品にも使われた。その後忘れられていたが,1919年に A.ドルメッチがバロック期の型を復興させ,現在も使われている。

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世界大百科事典(旧版)内のリコーダーの言及

【笛】より

… エア・リードは横笛以外の楽器でも利用されている。たとえば縦に構える楽器として,まずリコーダースリン,タイのクルイなどがある。管の上端を一応は閉じてあるが,なんらかの形で狭い隙間(気道)がつくってあり,管端をくわえて吹くと呼気は気道に入って歌口に導かれる。…

【フルート】より

… この種の楽器の歴史は非常に古く,ヨーロッパへは12~13世紀ころ伝えられ,ルネサンス時代に入ると同族楽器だけで,あるいは他の楽器や歌に合わせてアンサンブル用楽器として用いられた。しかしそのための楽器としてリコーダーの方が先んじて完成の域にあり,フルートはようやく17世紀の後半になって,フランスのオットテール一族を中心に改良が行われた。彼らの仕事は室内楽に適する木管楽器を作り,奏法を開発し,作品を書くことであった。…

※「リコーダー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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