尺八(読み)しゃくはち

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

尺八
しゃくはち

日本の管楽器。管上端を歌口とする竹製の無簧 (こう) の縦笛。下記の数種があるが,通常はそのうちの普化 (ふけ) 尺八を単に尺八と呼ぶ。 (1) 古代尺八 別称雅楽尺八。平安時代初期まで用いられた。雅楽の合奏楽器。正倉院に8管伝存。管長 40cm前後,指孔径 2cm余。指孔6。 (2) 一節切 (ひとよぎり)  節を1個含む竹管。管長約 33.6cm,外径 3cm弱。指孔5。室町時代に出現。独奏用また俗謡の伴奏用。 17世紀末に最盛。 19世紀に入り衰滅。 (3) 普化尺八 竹の根本を用い,管長は1尺8寸 (約 54.5cm) を基準として各種あり,外径約 4cm。指孔5。 16世紀末頃出現。江戸時代は普化宗法器として独占し,独奏専用。明治以後,楽器として一般に開放され,独奏のほか地歌箏曲との合奏により普及。開孔音列は,筒音 の1尺8寸管の場合, ハニ。 (4) 多孔尺八 普化尺八の孔数をふやしたもの。7孔,9孔などがある。

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デジタル大辞泉の解説

しゃく‐はち【尺八】

管の上端を斜めに削り取って作った歌口(うたぐち)に直接唇を当てて吹く縦笛。普通は竹製。中国で唐代初期に創作されたという。日本には古代尺八・一節切(ひとよぎり)・普化(ふけ)尺八などがあるが、ふつう使用されるのは普化尺八で、指孔五つ、長さ1尺8寸(約54.5センチ)を標準管とし、短管・長管がある。
書画に用いる紙・絹などの幅1尺8寸のもの。
竹製の花器の一。一重切りで、長さ1尺8寸の中央よりやや下に節をとったもの。利休作に始まる。
1の吹奏方法の連想から》男性器に対する口唇による刺激。フェラチオ

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百科事典マイペディアの解説

尺八【しゃくはち】

日本の管楽器。奈良〜平安時代に雅楽で用いられた古代尺八(雅楽尺八),近世初頭に武士や庶民に愛好された一節切(ひとよぎり),江戸時代に虚無僧が吹奏した普化(ふけ)尺八の3種に大別され,単に尺八というときは普化尺八をさす。竹の根元に近い部分を用いて作り,指孔は表4孔,裏1孔である。長さが1尺8寸ということから尺八と呼ばれるが,今日では長短さまざまのものが使われている。尺八音楽のおもな流派としては,琴古流都山流明暗流などがある。
→関連項目ケーナ胡弓三味線タンソ(短簫)日本音楽

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日本文化いろは事典の解説

尺八

真竹〔まだけ〕で作られてる縦笛。天然の素材を使われているため、一本一本全て微妙な音の違いがあります。一番多く使われる尺八の寸法が1尺8寸(大体54.5cm)である事から「尺八」という名前で呼ばれています。

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音楽用語ダスの解説

尺八

日本には、奈良時代に中国から唐楽の楽器として伝来した。現在では尺八といえば一般的に、狭義で普化尺八のことを指す。竹製で、管の外側を斜めに削り落として作った歌口に息を唇から直接吹きつけて音を発する。前面に4つ、背面に1つの指孔があり、音高の変化はその指孔の開閉と、息の圧力および角度の変化によって得られる。筒音から順に指孔を全開または全閉して得られる第1オクターブ(呂または乙)の音(幹音別記譜例)は、同じ指使いで鋭く息を吹き入れて発する第2オクターブの音(甲)、独特な指使いで、不完全ながらに得ることができる第3オクターブ(大甲)の音を合わせて常用される音域は、ほぼ2オクターブ半に及ぶ。通常は右手を下に構えるが、逆でも構わない。管長は1尺8寸(約54.5cm)を標準とするが、それを中心に1寸(約3cm)刻みに長短が各種あって、半音ずつの移調楽器となっている。

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世界大百科事典 第2版の解説

しゃくはち【尺八】

日本の管楽器。竹製,ノンリードの縦笛。楽器学の分類ではフルート属に属する。名称は標準管長(1尺8寸)に由来する。日本の音楽史上に現れた広義の尺八には,古代尺八,天吹(てんぷく),一節切(ひとよぎり)尺八などもあるが,現行するのは普化(ふけ)尺八のみであるから,以下,それを主として解説する。〈普化尺八〉は〈虚無僧尺八〉とも呼ばれるが,江戸時代にこの楽器が普化宗(禅宗の一種。その僧が虚無僧)の専用とされたためである。

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大辞林 第三版の解説

しゃくはち【尺八】

〔長さ一尺八寸を基準とするのでいう〕 縦笛の一。簧した(リード)はなく、歌口に直接唇をあてて吹奏する。古代尺八(雅楽尺八)・一節切ひとよぎり・普化ふけ尺八(虚無僧こむそう尺八)・多孔尺八(新尺八)などがあるが、今日多く使われているのは普化尺八で、太い竹の根元に近い部分で作る。指孔は五孔。流派としては都山流・琴古きんこ流・明暗流がある。竹。
紙・絹などの幅一尺八寸のもの。
男根に対する口淫。フェラチオ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

尺八
しゃくはち

日本と古代中国の無簧(むこう)(ノン・リード)の縦笛。尺八の名称は、中国唐代の律尺による1尺8寸(約43.7センチメートル)に由来する。狭義には現行の普化(ふけ)尺八をさすが、広義には、古代尺八、天吹(てんぷく)、一節切(ひとよぎり)、多孔尺八をも含む。原則として竹製。管の太さ、長さ、指孔および節の数は、種類により異なる。ただし、管の上端の一部を外側に斜めに削りとった形の歌口は共通で、その鋭い角に直接息を吹き付けて音を発するのが特徴である。[月溪恒子]

古代尺八

雅楽尺八、正倉院尺八ともいう。雅楽(唐楽)の楽器として7世紀後半以後日本に伝来した。『唐書(とうじょ)』によれば、7世紀中ごろ、楽人呂才(りょさい)は従前の縦笛を改善整備し、十二律にあわせた12種の長さの管をつくった。その最長管(中国十二律の基準音である黄鐘(こうしょう)を筒音(つつね)とする管)の長さ、1尺8寸から尺八の名称が生まれたらしい。日本に伝わったうち、正倉院に8管、法隆寺に1管(現在は東京国立博物館にある)、計9管が現存する。
 指孔は前面5孔、背面1孔の6孔。管長は1尺8寸(黄鐘管)を最長にさまざま。節は3節で、玉(ぎょく)・石(せき)・牙(げ)など竹製以外の材も、竹管を模して三つの節をもつ。
 10世紀ごろまで雅楽の管絃(かんげん)合奏に用いられたが、やがてその編成から外された。その後平安時代末ごろまでは雅楽以外で用いられたものの、楽譜などの記録を残さなかったため、奏法や音階など音楽についてはまったくわからない。[月溪恒子]

普化尺八

狭義の尺八。江戸時代を通じて普化宗の法器(宗教の道具)であったことに由来する名称。現行される尺八はすべてこの種で、他種との区別のため、普化尺八または虚無僧(こむそう)尺八とよぶ。普化尺八の名が一般化しているが、歴史的には虚無僧尺八とよぶほうが適切である。また近代以降の楽曲と区別して、「普化宗時代に虚無僧によって吹かれた楽曲」の意味にも用いる。[月溪恒子]
形態と奏法
真竹を用い、根に近い部分を歌口(上端)にする一節切とは逆に、管尻(下端)に根の部分を使う。指孔は前面4孔、背面1孔の5孔。節は中間に3節、歌口と管尻の4節をあわせて7節あるが、古代尺八と同様、中間の3節が基本の形と思われる。古管の管内は、抜いた節の一部を凸起として残す、ほぼ自然の状態だが、近代以降の尺八は、管内を滑らかに磨き、砥の粉(とのこ)や石膏(せっこう)で地塗りして漆で仕上げるため、均質な音色と音量が得られる。前者を「地無し尺八」、後者を「地塗り尺八」とよび、外観は同じでも楽器の特性がまったく異なる。前者は古典本曲(ほんきょく)に適し、後者は三曲合奏や現代曲に適すといわれる。また、節と指孔の理想的な関係を自然の竹材に求めるのが困難なことから、調節に便利な中継ぎが多い。歌口には、撥先(ばちさき)型や三日月型の水牛角(つの)または象牙(ぞうげ)を細工した箝口(はさみぐち)を埋める。これは歌口補強のためで、近代以降のくふうの一つである。
 管長の標準は曲尺(かねじゃく)の1尺8寸(約54.5センチメートル)。1尺3寸ぐらいから3尺くらいまで、1寸刻みで長短各種あり、1寸の増減で基音(指孔を全閉した筒音)がほぼ半音上下する。指孔の開閉の組合せによる基本音列(レ・ファ・ソ・ラ・ド)のほか、半開・4分の3開・4分の1開・かざし指などの指の操作、メリ・カリなどのあごの操作により、派生音を自由に出すことができる。また指やあごの微妙な運動による微分音やポルタメント奏(メリ込(こみ)、スリ上げ、ナヤシなど)、細かい指の動きによるトレモロ奏(コロコロ、カラカラ)、あごの連続運動によるビブラート奏(縦ユリ・横ユリ・斜ユリ)、のどや息を使った特殊奏(タマネ、ムラ息、コミ吹(ぶき))など、多彩な技法を用いる。[月溪恒子]
記譜法
記譜法は、指使いにつけられた名称を片仮名文字で表記する奏法譜。この文字を譜字(ふじ)といい、「フホウ式」(旧譜)と「ロツレ式」(新譜)の2種がある。フホウ譜は17世紀に一節切で用いられ、普化尺八では尾崎真龍(しんりょう)(1820―88)の系統、明暗真法(みょうあんしんぽう)流、宗悦(そうえつ)流(ともに廃流)などで使用された。宗悦流の末流、竹保(ちくほ)流にのみ現行される。ロツレ譜は一節切(小竹(こたけ))にも一時使われたが、18世紀以降琴古(きんこ)流尺八譜として定着し今日に至る。現行譜のほとんどがロツレ式だが、派生音や音価表記の方法は根笹派錦風(ねざさはきんぷう)流、西園(せいえん)流、明暗対山(みょうあんたいざん)流(または明暗対山派)、都山(とざん)流、上田流など、各流とも異なり、指法も微妙な差があって複雑である。[月溪恒子]
流派
虚無僧の修行として尺八が吹かれた江戸時代には、普化宗寺院の尺八指南役(吹合(ふきあわせ))によって教授され、流派のような組織は存在しなかった。京や江戸を中心に、全国に多くの尺八名人や製管師が活躍したと思われるが、記録に残されているのはわずかである。江戸の吹合として活躍した黒沢琴古(きんこ)(1710―71)は歴史に名をとどめた数少ない一人で、4世まで家芸を継承、今日の琴古流の基礎が築かれた。しかし家元組織としての流が確立するのは普化宗廃止(1871)後で、1896年(明治29)に都山流、1917年(大正6)に上田流と竹保流の近代流派が誕生。一方、普化宗時代の伝統を継承する諸派に、根笹派錦風流、西園流、明暗対山流などの派もあるが、近代流派のような組織力はもたない。[月溪恒子]
楽曲の種類
尺八音楽の分類概念に、本曲(ほんきょく)と外曲(がいきょく)の用語がある。本曲とは「尺八のみの、尺八のための曲」、外曲とは「他楽器曲(他種目)の尺八への編曲」を意味する。普化宗時代はすべて本曲であったため、この分類すら不要だったが、廃宗後三曲合奏に仲間入りしたことで区別が生じた。また近代流派の流曲を「都山流本曲」などとよんだことから、古典本曲と近代本曲に区別され、さらに演奏形態で近代本曲を独奏本曲と合奏本曲に分けるなど、用語の拡大化がみられる。
 内容的には、古典本曲の大半が普化宗の宗教音楽に、古典本曲の一部と外曲や近代本曲が芸術音楽に入り、その他これらとはまったく別に、民謡尺八とよばれる民俗音楽、ジャズやポピュラーなどの大衆音楽も含まれる。このように尺八は、民俗から芸術まで、古典から現代まで、独奏からさまざまな組合せによる合奏まで広く用いられている。[月溪恒子]

多孔尺八

普化尺八の指孔の数を増やした改造楽器。昭和初期に考案された七孔尺八、九孔尺八、オークラウロの3種。ほとんど普及せず、七孔尺八がごく一部で使用されるのみである。[月溪恒子]
『上野堅實著『尺八の歴史』(1983・キョウワ出版社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

さく‐はち【尺八】

〘名〙 (「さく」は「しゃく」の直音表記) 尺八(しゃくはち)のこと。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「大ひちりき・さくはちの笛などの、大声を吹きあげつつ」

しゃく‐はち【尺八】

〘名〙
① 中国、日本の縦吹(たてぶき)管楽器。リードに当たるものはなく、管の上端の外側を斜めに三日月形にそぎ取ってつくられた歌口(うたぐち)に、直接唇を当てて吹奏する。さくはち。しゃくはつ。
(イ) 中国唐代初期に現われた雅楽器。黄鐘律(こうしょうりつ)の長さ九寸の二倍、一尺八寸(唐尺から換算すると約五六センチメートル)を基本とする。指孔は表五孔背一孔の六孔。日本には奈良時代に伝わり、唐楽の演奏などに用いられたが、平安中期ごろには消滅した。他と区別して、古代尺八、雅楽尺八、正倉院尺八などと呼ばれる。
※正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳「玉尺八一管 尺八一管 樺纏尺八一管 刻彫尺八一管」
※今鏡(1170)三「尺八といひて、吹き絶えたる笛、はじめてこのたび吹き出したると承りしこそ、いとめづらしき事なれ」 〔新唐書‐呂才伝〕
(ロ) 室町中期ごろに、南中国から伝来したといわれる竹笛。長さは約一尺一寸一分(約三三センチメートル)。根に近いほうを歌口とする。指孔は表四背一の五孔。真中よりやや歌口よりに節が一個あるところから、一節切(ひとよぎり)と呼ばれる。
※申楽談儀(1430)能の色どり「内にての音曲には、坐断し、右に扇を持て、左にはしゃく八を番(つが)ゑられしが」
(ハ) 今日普通に尺八と呼ばれるもの。多く、太い竹の根に近い部分で作られ、一節切とは逆に、根から遠い方に歌口がある。管長は曲尺の一尺八寸(約五四・五センチメートル)を基本とするが、他に長短各種のものが使用されている。指孔は一節切と同じく五孔。普化(ふけ)宗の法器として用いられたので、普化尺八、虚無僧(こむそう)尺八と呼ばれる。また、「竹」とも呼ばれる。
※浮世草子・近代艷隠者(1686)二「我いにしへ諸国執行(しゅぎょう)の心さしありて、尺八の僧と成つつ」
② 書画に用いる紙、絹などの幅一尺八寸のもの。
③ 楽器の尺八をのち、節をぬかずに花器に利用したもの。
④ (①(ハ) に形状が似ているところから) 男根。また、それに対する口淫。フェラチオ。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「尺八も男もよいがきたない手」
⑤ 羽子板の一種。長さ二尺(約六〇センチメートル)から二尺五寸(約七五センチメートル)くらいまでをいう。

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世界大百科事典内の尺八の言及

【虚無僧】より

…吉田兼好の《徒然草(つれづれぐさ)》に,〈ぼろぼろ〉〈ぼろんじ〉と見え,我執深く闘争を事にする卑徒としている。《三十二番職人歌合》は,尺八を吹いて門戸にたち托鉢(たくはつ)することをもっぱらの業としたとする。普化宗は,中国唐代の鎮州普化を祖とし,日本には無本覚心(むほんかくしん)(法灯国師(ほつとうこくし))が伝えた。…

【日本音楽】より

…〈邦楽〉はさらに狭義に使われることもあって,雅楽,声明(しようみよう)(仏教声楽),平曲,能楽,および浪曲などは含まれないこともある。つまり,最狭義の〈邦楽〉には,三味線,箏(そう),尺八などを使う近世の邦楽(〈近世邦楽〉としばしばいわれる)だけが含まれるという考え方が行われている。 日本の音楽を分類すると,まず前述の狭義の〈日本音楽〉,すなわち伝統音楽と洋楽とに大別される。…

【笛】より

…オルガンのパイプの主軸であるフルー管もこれと基本的に同じで,機械送風を用いることと,吹込み口も歌口も下部にある点が異なる。 やはり縦型の尺八,洞簫(どうしよう)(),ケーナネイなどの場合は,管の上端が開放されており,気道は設けられていない。気流の諸条件は横笛の場合と同じく,すべて奏者の肉体的制御にゆだねられ,管端が歌口を兼ねる。…

【骨】より

…古代エジプトのシビという笛は人の脛骨から造られた。ラテン語tibiaには脛骨のほかに管,フルートの意味があり,一説に中国にはじまる竹製の尺八もtibiaに由来するという。古代エジプト人は天然磁石を〈ホルスの骨〉と呼び,鉄を〈セトの骨〉と考えた。…

※「尺八」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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