日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファゴット」の意味・わかりやすい解説
ファゴット
ふぁごっと
fagotto イタリア語
ダブルリードの気鳴楽器の一種。バスーン(英語ではbassoon)ともよばれる。円錐(えんすい)管を基本とする木管楽器で、通常B♭1~F5の音域をもち、木管群の低音楽器としてオーケストラで重要な役割を果たしている。
管の全長は2.54メートルだが、2本の管を束ねたような形にして楽器自体の長さは1.3メートルほどになっている。オーボエやイングリッシュ・ホルンよりも大型のダブルリードを金属製の吹き込み管(クルック)に取り付け、これを本体につなぐ。クルックにはごく小さい孔(あな)が本体に近いほうにあけてあり、これによってオーバーブローを容易にしている。現在の楽器は、本体を四つに分解できる。クルックのつくほうから順に、ウィング・ジョイント、ダブル・ジョイント、ロング・ジョイント、ベル・ジョイントである。ウィング・ジョイントは、指孔のうち三つを斜めにあけるために管壁の一部が分厚くなっている。これは、垂直にあけると指が届かなくなるためである。ダブル・ジョイントは2本の管が通っており、その2本が下端で金属のU字管によってつながれている。そしてその上から、U字管を保護するために金属のカバーがつけられている。この二つのジョイントにキーが集められており、左手でウィング・ジョイント、右手でダブル・ジョイントの指孔とキーを開閉する。多くのキーが両親指に割り当てられている。管の内径は徐々に大きくなり、ロング・ジョイント、ベル・ジョイントへと広がっていく。本体の木はカエデを用いるのがもっとも一般的である。
この種の楽器はかつては5種類あったが現在では2種類で、前述のファゴットのほかにコントラ・ファゴットがある。これはファゴットよりも1オクターブ低い音域の楽器で、基本構造はファゴットと同じだが、さらに長い管を必要とするため、操作しやすいように何重にも折り曲げた形になっている。
[卜田隆嗣]