正無し(読み)マサナシ

デジタル大辞泉 「正無し」の意味・読み・例文・類語

まさ‐な・し【正無し】

[形ク]《「予想される通常状態ではない」の意を表す語》
好ましくない。みっともない。ぐあいが悪い。
「声高になのたまひそ…、いと―・し」〈竹取
よろしくない。いけない。
「何をか奉らむ、まめまめしき物は―・かりなむ」〈更級
普通でない。尋常でない。
「いとかう―・きまで、いにしへの墨書きの上手ども跡をくらうなしつべかめるは」〈絵合

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「正無し」の意味・読み・例文・類語

まさ‐な・し【正無】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ( まさにあるべきさまから、いちじるしくかけ離れていることにいうか )
  2. [ 一 ] 一般的な規準に合致しない。
    1. 見苦しい。外聞が悪い。行儀が悪い。
      1. [初出の実例]「こわ高になのたまひそ。屋の上にをる人どもの聞くに、いとまさなし」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 不当だ。ふつごうだ。あってはならない。
      1. [初出の実例]「まさなうも敵(かたき)にうしろをば見する物かな」(出典平家物語(13C前)八)
    3. 正常でない。たわいのない。
      1. [初出の実例]「わどのやまひにおかされて、まさなくそぞろごといふなめり」(出典:俳諧・新花摘(1784))
  3. [ 二 ] その時その時の予想や期待に合致しない。
    1. 思いがけない。全く予想もしていない。
      1. [初出の実例]「ゑは猶ふでのついでにすさびさせ給あだごととこそ思ひ給へしか、いとかうまさなきまで、いにしへの墨書の上手どもあとを暗うなしつべかめるは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
    2. 予想・期待に合わず、いけない。
      1. [初出の実例]「見る目にあくはまさなき事ぞよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  4. [ 三 ] 事実と合致しない。
    1. [初出の実例]「まことに夢の正(マサ)なきにあらず」(出典:読本・雨月物語(1776)菊花の約)

正無しの派生語

まさな‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

正無しの派生語

まさな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android