求那跋陀羅(読み)ぐなばっだら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「求那跋陀羅」の意味・わかりやすい解説

求那跋陀羅(ぐなばっだら)
ぐなばっだら
(394―468)

インドから中国に渡来した訳経僧。サンスクリット名はグナバドラGuabhadra。初め小乗(上座部仏教)を学んだが、のちに大乗に転向した。セイロン島(現、スリランカ)を経由して海路で中国の広州(広東(カントン)省)に着く。劉宋(りゅうそう)の文帝(在位424~453)に迎えられ、おもに都の祇洹寺(ぎおんじ)で訳経に従事した。彼の訳した経典でもっとも有名なものは『勝鬘経(しょうまんぎょう)』と『楞伽経(りょうがきょう)』(四巻本)である。これらは如来蔵(にょらいぞう)思想や唯識(ゆいしき)思想が中国に導入されるうえで重要な役割を果たした。

[岡部和雄 2016年11月18日]


求那跋陀羅(ぐなばどら)
ぐなばどら

求那跋陀羅

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「求那跋陀羅」の意味・わかりやすい解説

求那跋陀羅
ぐなばっだら
Guṇabhadra

[生]394
[没]泰始4(468)
中国における訳経僧の一人。号は摩訶衍。功徳賢と訳す。中インドのバラモンに生れ,幼時から諸学に通じていたが,仏典に接して出家。初め部派仏教を学び,のち大乗を学んだ。のち,海路を経て広州に上陸し,祇 洹寺に住んで経典の翻訳に従事。また中興寺などにも住した。翻訳した経典は,『勝鬘経』や『楞伽 (りょうが) 経』 (四巻楞伽) ,『雑阿含経』など 52部 134巻の多数に及んでいる。

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世界大百科事典(旧版)内の求那跋陀羅の言及

【絵因果経】より

…《過去現在因果経》に,その経意をあらわす絵を加えた絵巻をいう。《過去現在因果経》は,5世紀に求那跋陀羅(ぐなばつだら)によって漢訳された全4巻の仏伝経典で,釈迦の過去世(前世)の善行(本生譚すなわちジャータカ)と現世での事跡(仏伝)を記し,過去世に植えた善因は決して磨滅することなく果となって現在に及ぶことを説いている。絵巻では,紙面を上下2段に分け,下段は経文を1行8字にして書き,上段にはこれに対応する情景を連続的に描きならべ,全8巻に仕立てている。…

【勝鬘経】より

…原題《シュリーマーラーデービー・シンハナーダ・スートラŚrīmālādevī‐siṃhanāda‐sūtra》。サンスクリット原典は失われ(断片は他書に引用されている),チベット語訳と2種の漢訳(求那跋陀羅(ぐなばだら)訳,菩提流支訳)が現存。広く用いられるのは求那跋陀羅訳《勝鬘師子吼一乗大方広方便経》である。…

※「求那跋陀羅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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