デジタル大辞泉
「沖つ白波」の意味・読み・例文・類語
おき‐つ‐しらなみ【沖つ白波】
沖に立つ白波。
「なごのうみの霞の間よりながむれば入る日をあらふ―」〈新古今・春上〉
[補説]沖の白波が「立つ」ところから「立田山」の、また、白波の「しら」と同音であるところから「知らず」の序詞ともなる。
「海の底―竜田山」〈万・八三〉
「近江の海―知らねども」〈万・二四三五〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
おきつ【沖つ】 白波(しらなみ)
① 沖に立つ白い波。白波が立つというところから、「立つ」と同音を含む
地名「立田山」の、また、「白波」の「しら」と同音の「知らず」の序詞として用いられることもある。
※
万葉(8C後)一・八三「海
(わた)の底奥津白浪
(おきつしらなみ)立田山いつか越えなむ妹があたり見む」
※伊勢
物語(10C前)
二三「風吹けばおきつしら浪立田山夜半にや君がひとりこゆらん」
※今鏡(1170)九「その用光
(もちみつ)が
相撲の使に西の国へ下りけるに、吉備国の程にて沖つ白波立ち来て、ここにて命にも絶えぬべく見えければ」
[語誌](1)万葉歌で多用され、平安時代以降の
和歌に踏襲された。平安時代の
語法では「沖の白波」だが、和歌では「沖つ」が主に用いられた。
(2)①の
挙例「伊勢物語」の歌は、「万葉‐八三」の類歌または翻案歌を歌物語にはめ込んだもので、歌
自体としては「立つ」の序詞に過ぎないが、「
俊頼髄脳」に「白波といふはぬす人をいふなり」とあるように「後漢書‐霊帝紀」に見える「白波賊」から「白波」を盗賊の意として解釈された。この歌(物語)が極めて有名であったので、②のように「沖つ白波」自体が盗賊を意味する修辞的
表現として用いられるようになった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報