平安後期、院政期歌壇の指導者源俊頼(としより)が書いた歌論書。1112年(天永3)ごろ、藤原勲子(後の鳥羽(とば)院皇后・高陽院(かやのいん)泰子=改名)のために述作したらしい。『俊頼無名抄(むみょうしょう)』『俊秘(しゅんぴ)抄』『俊頼口伝(くでん)集』などの別名でも伝わっている。入門指南のための和歌概説ながら、歌体論、歌病論、和歌効用論から始めて、題詠論、秀歌論、歌語論に及ぶ広い体系的述作を志している。全体に実作の立場から具体的に作品を解明し、和歌説話も豊富に取り込んでいる。俊頼の新風志向がはっきりうかがわれ、後の歌学、歌論に大きな影響を与えた。
[近藤潤一]
『橋本不美男校注『俊頼髄脳』(『日本古典文学全集50 歌論集』所収・1975・小学館)』▽『佐佐木信綱編、久曽神昇著『日本歌学大系1』(1963・風間書房)』
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…歌を様式面から10種に分類把握する歌論書である(和歌十体(じつてい))。《俊頼髄脳(としよりずいのう)》は12世紀初頭に成立した歌論書で,源俊頼が関白藤原忠実の娘泰子(高陽院)の作歌参考のために書いた実用向けの歌論である。〈心〉の重視を言いつつ,〈詞をかざり詠むべきなり〉とも言って,〈言葉〉の尊重,言語世界の自立をも示唆している点が斬新であった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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