ラテン語の ipse,フランス語の méme,英語の self,ドイツ語の selbstにあたる語で,特にプラトンのイデア説における術語として重要。イデアとはある一つのものが何であるかを説明するときの対象となるものの本質それ自体 autē hē ousia,たとえば「等しさそれ自体」 auto to ison,「美それ自体」 auto to kalonという真の存在 to ontōs onをいい,autosはイデアを個々の感覚的個物から区別する用語として重要な役割を果している (『ファイドン』) 。アリストテレスはイデアと感覚的個物の相違はこの autosに尽きるとし,イデア説は感覚的なものを非感覚的なものと定立し,それに不変という述語を与えているにすぎないと論難している (『形而上学』) 。