改訂新版 世界大百科事典 「油水分離」の意味・わかりやすい解説
油水分離 (ゆすいぶんり)
oil-water separation
重力場あるいは遠心力場で,油と水の比重差により水中に含まれる油分もしくは油中の水分が分かれる現象をいう。工場排水や洗浄水中に混入している油分が油滴となって水中に乳濁分散している乳濁液をタンク内に静置すると,油は水より軽いので浮上し凝結して油と水の2液相に分かれる。これは浮上分離といわれ,油中の水滴の沈降分離の逆であるが,現象は同一として考えてよい。油滴の大きさが1mm以上なら乳濁液は不安定で比較的容易に分離できるが,油滴径が1~1.5μmの乳濁液は安定で浮上凝結分離に長時間を要する。乳濁液を加温すれば粘度が低下して液滴の移動速度は大きくなり,また液滴の表面張力が大きければ凝結速度は速くなる。小さな液滴の凝結を促進するには目的に応じ親水性もしくは疎水性の膜や繊維層によるろ(濾)過などの方法があり,航空機燃料中の微量水分除去などに用いられる。
石油精製工場の含油排水の油水分離装置としてよく用いられるAPI(American Petroleum Institute)油水分離装置は,槽内に多数の水平板をおいて沈降性粒子を除去するとともに,150μm以上の油滴を連続的に分離回収する。水平板の代りに槽内に多数の平行な傾斜板を挿入して有効分離面積を増加させたPPI(parallel plate interceptor)方式,あるいは図に示すCPI(corrugated plate interceptor)油水分離装置は傾斜板を平板でなく波板におきかえた方式で,60μm以上の油滴分離に有効で,設置面積を低減できる利点がある。この後にさらに物理化学的あるいは生物的処理設備を設ける場合もある。安定な乳濁液には遠心デカンターや遠心沈降機が用いられる(遠心分離機)。油分が遊離状態で水面に浮遊している場合には,水とともに油分をくみ上げ,タンク内で静置分離するか,軽石,木粉,布やスポンジなどに油分を吸収させて回収したり,あるいは流出油が大量なら界面活性剤を表面に散布し水中に分散沈降させるなどの方法がとられる。
執筆者:渡辺 治夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報