泉殿(読み)イズミドノ

デジタル大辞泉 「泉殿」の意味・読み・例文・類語

いずみ‐どの〔いづみ‐〕【泉殿】

平安・鎌倉時代寝殿造りで、泉のある邸宅泉亭
寝殿造りの南庭泉水に突き出した、納涼・観月のための小建物。泉廊。泉の屋。 夏》

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精選版 日本国語大辞典 「泉殿」の意味・読み・例文・類語

いずみ‐どのいづみ‥【泉殿】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 平安、鎌倉時代における泉のある邸宅。〔為房卿記‐寛治四年(1090)六月六日〕
  3. 邸宅内の泉の出る所に建てられた建物。泉廊。泉の屋。
    1. 泉殿<b>②</b>〈祭礼草紙〉
      泉殿祭礼草紙
    2. [初出の実例]「こなたかなたの人は、いづみどのに出でて聞く」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泉殿」の意味・わかりやすい解説

泉殿
いずみどの

平安・鎌倉時代に京都で有名な泉を邸内に取り入れてつくられた貴族の住宅の別称。白川泉殿、六波羅(ろくはら)泉殿などが著名である。京都では地下水の伏流を求めて作庭したため、遣水(やりみず)を引き入れるよりも地下水が湧(わ)き出る場所が貴重視され、庭を構えた寝殿造の住宅の造営にあたって、重要な条件となっていた。こうしたことから湧泉(ゆうせん)のある邸宅が好まれ、湧泉を利用して池が掘られた。このような池泉に臨んで建てられた納涼や遊興の小亭も泉殿の名でよばれている。なお、寝殿造の住宅で、左右の中門廊先端の池に臨んだ建物をそれぞれ泉殿、釣殿(つりどの)とする説が古書にみえるが、誤りである。

[工藤圭章]

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世界大百科事典(旧版)内の泉殿の言及

【住居】より

… 貴族の住いである寝殿造は,所有者の地位や財力によって建築の規模も棟数も大きく違ってくるが,共通して見られる特徴を要約すれば次のようになる。(a)主人の居所である寝殿,家族の居所である対屋(たいのや)や庭園観賞のための釣殿(つりどの),泉殿(いずみどの),内向の施設である蔵人所(くろうどどころ),侍所(さむらいどころ),随身所(ずいじんどころ),車宿(くるまやどり),台盤所(だいはんどころ)など,独立した建築群から成り立っている。(b)それぞれの建物は廊または渡殿(わたどの)でつながれる。…

※「泉殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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