遣水(読み)やりみず

精選版 日本国語大辞典 「遣水」の意味・読み・例文・類語

やり‐みず‥みづ【遣水】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 寝殿造で、外からひき入れて庭園に作った流れ。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「なき人の影だに見えぬやり水のそこは涙にながしてぞこし〈伊勢〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)哀傷・一四〇二)
    2. 「虫の音かごとがましく、遣水の音のどかなり」(出典:徒然草(1331頃)四四)
  3. 植え込みや盆栽などに水を与えること。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遣水」の意味・わかりやすい解説

遣水
やりみず

平安時代の寝殿造(しんでんづくり)において、外から引き入れて庭園につくった流れ。当時の物語などでは、その流れを引いてつくった池泉のことも遣水とよんでいる。造園意匠としては、平安期から鎌倉期にかけて流行した、曲水(きょくすい)を稲妻形に流した流れをいうが、現存するものはほとんどなく、福岡県の太宰府(だざいふ)天満宮、同横岳崇福寺(おうがくすうふくじ)のものがあるくらいである。平安中期の作庭方法論書『作庭記』では、東より南に迎えて西へ流すのを順流とす、といっている。また、遣水にはかならず板石状の石橋を低く架けるのが普通で、これは庭園の石橋として古い例である。昭和になってから重森三玲(みれい)により、古式を踏まえた遣水が奈良春日(かすが)大社社務所北庭、島根県・村上邸山泉居露地、山口県・漢陽寺に作庭された。

[重森完途]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遣水」の意味・わかりやすい解説

遣水
やりみず

庭園などに水を導き入れて流れるようにしたもの。流水曲折にさまざまな工夫が凝らされ,また水中底石,流れを変える横石,水越石などの配置にも独特の苦心が払われた。平安・鎌倉時代の庭園では重視されたが,室町時代以降は枯山水の庭園が流行するにつれて次第に衰退した。『作庭記』に造り方が詳説されているが,それに近い構成が平泉毛越寺遺跡で発掘されている。

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百科事典マイペディア 「遣水」の意味・わかりやすい解説

遣水【やりみず】

庭園内に水を導き流れるようにしたもの。多く岩石草木等を配し風致をそえる。寝殿造の庭園では一般に北東から入れ南西に流出させる。
→関連項目枯山水

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世界大百科事典(旧版)内の遣水の言及

【庭園】より

…中島の裏側には楽屋がつくられ,舟遊びに興をそえることもあった。南庭には遣水(やりみず)と呼ばれる流れが寝殿と東の対屋(たいのや)との間,透渡廊(すきわたろう)の下をくぐって流れていた。池がつくられないような狭い敷地の場合でも,この遣水だけはつくられた。…

※「遣水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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