平安時代の寝殿造(しんでんづくり)において、外から引き入れて庭園につくった流れ。当時の物語などでは、その流れを引いてつくった池泉のことも遣水とよんでいる。造園意匠としては、平安期から鎌倉期にかけて流行した、曲水(きょくすい)を稲妻形に流した流れをいうが、現存するものはほとんどなく、福岡県の太宰府(だざいふ)天満宮、同横岳崇福寺(おうがくすうふくじ)のものがあるくらいである。平安中期の作庭方法論書『作庭記』では、東より南に迎えて西へ流すのを順流とす、といっている。また、遣水にはかならず板石状の石橋を低く架けるのが普通で、これは庭園の石橋として古い例である。昭和になってから重森三玲(みれい)により、古式を踏まえた遣水が奈良・春日(かすが)大社社務所北庭、島根県・村上邸山泉居露地、山口県・漢陽寺に作庭された。
[重森完途]
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…中島の裏側には楽屋がつくられ,舟遊びに興をそえることもあった。南庭には遣水(やりみず)と呼ばれる流れが寝殿と東の対屋(たいのや)との間,透渡廊(すきわたろう)の下をくぐって流れていた。池がつくられないような狭い敷地の場合でも,この遣水だけはつくられた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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