納涼(読み)のうりょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

納涼
のうりょう

涼みのこと。酷暑の候に,水辺林間避暑をする風は古来からあり,平安貴族は別荘ももっていた。夕方の涼風を利用して行う夕涼みは,江戸時代になると貴賤を問わず盛んになり,川に屋形船を浮べたり,河原を利用したりして遊興がなされた。また,花火や神仏縁日なども納涼風物として大いににぎわい,特に江戸両国橋界隈の納涼風俗は浮世絵名所絵にも描かれ名物でもあった。

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デジタル大辞泉の解説

のう‐りょう〔ナフリヤウ〕【納涼】

暑さを避けるため、工夫をこらして涼しさを味わうこと。すずみ。「納涼船」

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世界大百科事典 第2版の解説

のうりょう【納涼】

炎暑の候に暑さを避けること。〈涼み〉ともいう。古くは緑陰あるいは水辺に涼を求めた。平安貴族は寝殿造泉殿釣殿で,池の面を吹く夕風のなかで,釣りをしたり詩歌の会や音楽の会を催して暑さを忘れたと,《宇津保物語》や《源氏物語》に見える。また氷室(ひむろ)に貯蔵しておいた氷を,立夏の日に氷室開きをして,盛夏に用いることも一つの納涼であったろうが,これは限られた上流階級のことである。王朝時代の避暑地では宇治が有名であり,緑陰と川とに恵まれていたからであろう。

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大辞林 第三版の解説

のうりょう【納涼】

〔古くは「どうりょう」〕
(川べりや縁先などで)暑さを避けて涼しさを味わうこと。すずみ。 「 -花火大会」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

納涼
のうりょう

河畔や船上で夕涼みをする年中行事。東京・隅田(すみだ)川の川開きは7月最終の土曜日に行われ、華やかな名物行事となっているが、明治以前には旧暦5月28日から8月28日までの3か月間を隅田川の夕涼みの期間として、その初日に両国で川開きが行われたことが、『江戸名所図会』や『東都歳事記』にみえる。もとは手慰み程度に花火をあげていたが、茶屋、船宿が景気づけのため、玉屋、鍵(かぎ)屋などの花火師を競って買うようになり、花火大会が呼び物になった。現在は隅田川花火大会実行委員会の主催行事になった。
 京都でも古くから四条河原で納涼が行われ、旧暦6月7日から、14日の祇園会(ぎおんえ)を挟んで18日夜まで開かれた。納涼とはいうが、明らかに祇園祭の物忌みの期間であったと思われる。6月は稲田に十分水を補わなければならず、また害虫を追い払わねばならないときである。各地の祇園祭、天王祭も悪霊を払う行事であり、6月晦日(みそか)には大祓(おおはらい)の祭りも行われる。大分県日田(ひた)市などでも6月1日を川開きとよんで、花火をあげ、万灯流しの行事をする。仙台や福島では6月1日を川入りとよび、鹿児島県長島などではこの日を川祭りといっている。川祭り、川入りは、6月の物忌みに潔斎をする最初の日であったことがうかがわれる。
 都会の川開きも、これらの農村の川祭りから発展して、花火大会を中心とする行事にまで変化していったことは、おおよそ筋道をたどることが可能である。そのほか川開きの名称を用いないものも、多摩川の花火大会、河口湖の湖上祭、芦(あし)ノ湖の湖水祭、各地の海開き・滝開きなど、みな同じ趣旨から発展した行事ということができる。水辺で花火をあげて納涼大会を催し、人を集めることは全国的な流行となり、また盆の精霊(しょうりょう)送りと結び付けて灯籠(とうろう)流し、万灯流しを行う例も多くなっている。[田原 久]

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精選版 日本国語大辞典の解説

どう‐りょう ダフリャウ【納涼】

〘名〙 (「どう」は「納」の漢音) 暑さを避けて涼しさを味わうこと。のうりょう。
※菅家文草(900頃)二・夏日偶興「行吟古集納凉詩
源平盛衰記(14C前)四八「九夏三伏の熱(あつき)夕へには、泉に向(むかって)納凉(ダフリャウ)す」

のう‐りょう ナフリャウ【納涼】

〘名〙 暑さを避けて涼しさを味わうこと。すずみ。どうりょう。
※書言字考節用集(1717)一「納凉 ナフレウ」
※秋風と二人の男(1965)〈庄野潤三〉五「初めて行った年に納涼の映画があって」 〔徐陵‐内園逐涼詩〕
[補注]古くは「色葉字類抄」「源平盛衰記」「文明本節用集」、新しくは「譬喩尽」まで「どうりょう」と読んでいるので、漢籍と最近の例および「のうりょう」と確かに読んでいる例以外はすべて「どうりょう」の項へ収めた。

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