泥棒日記(読み)ドロボウニッキ(その他表記)Journal du voleur

デジタル大辞泉 「泥棒日記」の意味・読み・例文・類語

どろぼうにっき【泥棒日記】

原題、〈フランスJournal du voleur ジュネの自伝的小説。1949年刊。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「泥棒日記」の意味・わかりやすい解説

泥棒日記
どろぼうにっき
Journal du voleur

フランスの作家ジャン・ジュネの自伝的長編小説。1949年刊。流浪の旅を続けてきた作者はスペインにたどり着き、一匹のシラミのようにバルセロナ貧民街に住み着く。乞食(こじき)をしながら男娼(だんしょう)となり、かっぱらいとなり、やがて泥棒に仲間入りする。ベルギー、イタリアなど諸国を放浪してフランスへ帰る。日記とはいうが日付はなく、年代も追わず、過去と現在が交錯する話法で終始する。右手のない美男スティリターノなど、作中のやくざ連中はすべて高貴な聖徒として描かれ、汚辱を美に転換し聖化して自己を救済する過程が語られていて、ジュネの才能が純粋に結実した希有(けう)な生活体験の漂泊記録である。

[曽根元吉]

『朝吹三吉訳『泥棒日記』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「泥棒日記」の意味・わかりやすい解説

泥棒日記
どろぼうにっき
Journal du voleur

フランスの小説家,劇作家ジャン・ジュネの小説。 1949年刊。作者自身の半生を軸に,悪の壮麗な美に彩られた犯罪男色世界を詩的言語を駆使して描き,その復権を企てたもの。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の泥棒日記の言及

【ジュネ】より

…コクトー,J.P.サルトル,F.モーリヤック,P.クローデルらによる大統領への特赦請願が功を奏して,以後,ジュネは作家として生活するようになる。だがガリマール社による小説《泥棒日記Journal du voleur》の刊行(1949)と,同社刊の《ジュネ全集》の巻頭を飾るはずのサルトルの《聖ジュネ――役者にして殉教者Saint Genet――comédien et martyre》(1952)が,小説家ジュネの活動には終止符を打ってしまう。この中でのサルトルの精密で膨大な分析によって一種の〈空白状態〉に陥り,〈物を書くことができなくなった〉ジュネは,54年,《女中たち》の再演に際して書いた〈ジャン・ジャック・ポーベールあての手紙〉で語っているように,演劇によって作家としての再生を果たすことができた。…

※「泥棒日記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android