フランスの作家ジャン・ジュネの自伝的長編小説。1949年刊。流浪の旅を続けてきた作者はスペインにたどり着き、一匹のシラミのようにバルセロナの貧民街に住み着く。乞食(こじき)をしながら男娼(だんしょう)となり、かっぱらいとなり、やがて泥棒に仲間入りする。ベルギー、イタリアなど諸国を放浪してフランスへ帰る。日記とはいうが日付はなく、年代も追わず、過去と現在が交錯する話法で終始する。右手のない美男スティリターノなど、作中のやくざ連中はすべて高貴な聖徒として描かれ、汚辱を美に転換し聖化して自己を救済する過程が語られていて、ジュネの才能が純粋に結実した希有(けう)な生活体験の漂泊記録である。
[曽根元吉]
『朝吹三吉訳『泥棒日記』(新潮文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…コクトー,J.P.サルトル,F.モーリヤック,P.クローデルらによる大統領への特赦請願が功を奏して,以後,ジュネは作家として生活するようになる。だがガリマール社による小説《泥棒日記Journal du voleur》の刊行(1949)と,同社刊の《ジュネ全集》の巻頭を飾るはずのサルトルの《聖ジュネ――役者にして殉教者Saint Genet――comédien et martyre》(1952)が,小説家ジュネの活動には終止符を打ってしまう。この中でのサルトルの精密で膨大な分析によって一種の〈空白状態〉に陥り,〈物を書くことができなくなった〉ジュネは,54年,《女中たち》の再演に際して書いた〈ジャン・ジャック・ポーベールあての手紙〉で語っているように,演劇によって作家としての再生を果たすことができた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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