浪打峠(読み)なみうちとうげ

日本歴史地名大系 「浪打峠」の解説

浪打峠
なみうちとうげ

鳥越とりごえから二戸市福岡ふくおか村松むらまつへ抜ける旧奥州街道の峠をいい、この峠を中心とする地域はすえ松山まつやまとよばれる。浪打峠の交差層は国指定天然記念物。交差層は地層面に斜めに交わる小規模な層のことで、ここの交差層は海成層で多くの海棲動物化石を含み、大規模で美しいためによく知られ、末の松山層とよばれる。地形地質からみても海の波が打寄せたような状況を示しており、いかにも浪打峠の名称にふさわしい。古来歌に詠まれた末の松山はこの地であるとする説があり、「内史略」に「末の松山、二戸郡福岡と一戸の間也、俗に浪打峠と云、山上貝殻多し」として紀貫之・慈鎮・藤原定家の歌をあげる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「浪打峠」の意味・わかりやすい解説

浪打峠
なみうちとうげ

岩手県北西部、二戸市(にのへし)と一戸町(いちのへまち)の境界にある旧奥州街道の峠。標高302メートル。赤松の林で覆われ、峠一帯は貝殻や海生動物の化石を含む凝灰質砂岩の波状の交叉層(こうさそう)が露出し、国の天然記念物に指定されている。『古今和歌集』の「君をおきて……末の松山波も越えなむ」の遺跡地と伝えられるが、「末の松山」は当時、海辺近くにあった宮城県多賀城市の宝国寺背後の地といわれている。

[川本忠平]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浪打峠」の意味・わかりやすい解説

浪打峠
なみうちとうげ

岩手県北部,二戸市と一戸町を結ぶ旧国道上,標高 301mの峠。道を通すときの堀割りの両側に地層が露出し,地層形成時の環境がうかがえる。貝殻や海生動物の化石を含む砂岩の地層面が波状に交叉し,美しい縞模様を描き,「浪打峠の交叉層」として天然記念物に指定。峠を含む一帯は末の松山と呼ばれる景勝地。『古今和歌集』の「末ノ松山浪も越えなむ」の地とも伝えられるが,詠まれた地は,宮城県多賀城市八幡付近ではないかともいわれている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android