二戸郡(読み)にのへぐん

日本歴史地名大系 「二戸郡」の解説

二戸郡
にのへぐん

面積:九三七・〇八平方キロ
一戸いちのへ町・浄法寺じようぼうじ町・安代あしろ

県の北西部にあり、北は青森県三戸郡田子たつこ町と二戸市、東は九戸郡九戸村、南は岩手郡葛巻くずまき町・岩手町・西根にしね町・松尾まつお村、西は秋田県鹿角かづの市に接する。南西端の八幡平を源流とする安比あつぴ川が北東流し、二戸市域で馬淵まべち川に合流する。馬淵川は葛巻町から北流して一戸町・二戸市を経て青森県域に入り、八戸市で太平洋に注ぐ。安代町北西部、なし峠西の通称田山たやま地区は岩手県でただ一つ日本海に注ぐ米代よねしろ川水系に属する。国道四号が岩手町から一戸町へ入り、二戸市へ抜け、ほぼこれに沿ってJR東北本線が通る。国道二八二号は松尾村から安代町に入り、北北東に進んだあと西へ向かい鹿角市に抜ける。ほぼこれに沿ってJR花輪はなわ線と東北自動車道が通り、安代ジャンクションから八戸線が分岐している。安比川に沿って浄法寺街道(鹿角街道)が通り、安代町・浄法寺町・二戸市を結んでいる。

北流する馬淵川により東西の地質が著しく異なっている。馬淵川西側は那須なす火山帯の北部をなす諸火山の東腹にあたり、主として平坦な台地をなしている。この台地状の地形は第三紀層の削られた地表に火山屑の堆積したもので、草原となり放牧地に適している。台地の馬淵川に臨んだ所には第三紀層・古生層を露出している所もある。東側は太平洋沿岸に至るまでほぼ同一の高さを保ち、急激な地形の変化はなく古生層からなっている。この地域は第三紀の末頃までほとんど海水面に近かったと思われる。歌枕であるすえ松山まつやまの擬定地の一つである浪打なみうち峠は、一戸町鳥越とりごえと二戸市石切所いしきりどころとの境にあり、浪打峠の交差層は国指定天然記念物。峠の切通し部には新第三紀中新統に属する末の松山層下底部の粗粒砂岩が露出し、このなかに交差層(偽層・クロスラミナ)が発達する。峠両側の崖には貝殻などの化石がみられ、交差が縞のように並び浅海堆積層の特徴をよく残している。

古代・中世を通じて二戸の郡名はみられず、寛永一一年(一六三四)の領内郷村目録(盛岡市中央公民館蔵)に二戸郡とみえ、この頃からの呼称か。それ以前は糠部ぬかのぶ郡のうちであった。糠部郡九か戸くかのへは一二世紀以降に設けられたとされる九戸・四門の制に由来するという説があり、現二戸郡域は一戸に、現二戸市域が二戸に属したと思われる。

〔原始〕

近年の東北自動車道・同八戸線、国道四号一戸バイパスの建設に伴う調査により、飛躍的に当地方の先史時代の様相が解明されつつある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の二戸郡の言及

【糠部】より

…岩手県北部の二戸郡,九戸郡あたりと,下北半島を含む青森県東部一帯の地域の中世の郡名。郡とはいっても古代には見えないもので,平安時代末以後の中世に特有のものである。…

※「二戸郡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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