浮瀬楼跡(読み)うかんせろうあと

日本歴史地名大系 「浮瀬楼跡」の解説

浮瀬楼跡
うかんせろうあと

[現在地名]天王寺区伶人町

清光せいこう院の北坂の下にあった料亭。「東海道中膝栗毛」に「秋はうかむ瀬の月」として登場する名楼であった。「浪華の賑ひ」は「遥かに西南を見わたせバ、海原往来ゆきかふ百船の白帆、淡路島山に落かかる三日の月、雪のけしきハ言もさらなり。庭中には花紅葉の木々、春秋の草々を植て、四時ともに眺めに飽ざる遊観の勝地なり(中略)浪花に於て貨食家の魁たるものなり」と記し、二階造の浮瀬楼の雪景色を描く。「摂津名所図会」によれば鮑貝の一一の穴をふさいでつくった浮瀬という奇杯を所蔵し、これが料亭の名称となったという。浮瀬は長宗我部元親の陣羽織と伝える唐織の袋に入れられ、七合半の酒を盛ることができたが、これを満酌して飲んだ人は名簿にその名を記して誉としたという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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