運動場(読み)うんどうじょう

精選版 日本国語大辞典 「運動場」の意味・読み・例文・類語

うんどう‐じょう ‥ヂャウ【運動場】

〘名〙
① 運動をするための広場。体育運動をする施設のある場所。うんどうば。
※童謡・おさうぢたうばん(1939)〈与田準一〉「うんどうぢゃうに ちらかった かみくづ木のくづ あつめたら」
② 明治・大正期に、特に劇場のロビーをいう。
※紅茶の後(1911)〈永井荷風歌舞伎座桟敷にて「運動場(ウンドウヂャウ)へ行かう。そして花かんざしの間を歩かう」
[語誌](1)近代学校制度の整備によって生じた語。明治初期には、「はらごなしば」、また「あそびば」と呼ばれ、その後「うんどうば」と変わったが、一般に「うんどうじょう」と読み変えたのは、大正期に入ってからである。
(2)明治三三年(一九〇〇)の小学校令が運動場の設置を進めたと同時に、「運動場」という語を定着させた。

うんどう‐ば【運動場】

〘名〙
※当世少年気質(1892)〈巖谷小波〉三「此折塾生は大方運動場(ウンドウバ)へ出て居て」
建網垣網にそって導かれた魚群が魚取りに入る前に一時的にたまっている所。囲い網。

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デジタル大辞泉 「運動場」の意味・読み・例文・類語

うんどう‐じょう〔‐ヂヤウ〕【運動場】

運動競技をするために設けられた広場。グラウンド
[類語]競技場グラウンドコートコロシアムスタジアムトラックフィールド野球場サッカー場ピッチゴルフ場スキー場ゲレンデ競馬場馬場パドックスケートリンクサーキットホームグラウンド

うんどう‐ば【運動場】

うんどうじょう(運動場)」に同じ。
「―は長方形の芝生である」〈漱石三四郎
明治時代、劇場のロビーのこと。
「廊下―は勿論東西の花道平土間の間の歩みまで」〈荷風腕くらべ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運動場」の意味・わかりやすい解説

運動場
うんどうじょう

体育やスポーツを行うために必要な設備や施設を備えた一定の場所。文部科学省の「体育・スポーツ施設現況調査」(2002)では、体育・スポーツ施設は、学校体育・スポーツ施設、大学(短期大学)・高等専門学校体育・スポーツ施設、公共スポーツ施設、職場スポーツ施設、民間スポーツ施設に分けられ、学校体育・スポーツ施設の一つに運動場が数えられている。

 運動場は、体育を目的とした学校運動場とスポーツをおもな目的とした公衆運動場とに大別することができ、それぞれ利用者の種類や目的に沿って、合目的的に設けられている。

[笠間賢二]

学校運動場

学校運動場は学校教育法施行規則によってかならず備えなければならないとされている。歴史的には、近代学校制度の整備に伴い、教科としての体操が充実される過程で設置、整備されてきた。とくに1900年(明治33)の小学校令が体操科必修、体操場必備とし、面積基準を示したことが運動場の設置を進めた。この背景には、体操を気力の鍛錬、士気の鼓舞というナショナリズム興起の手段とする国家主義的教育の強い要請があった。面積基準は1904年に廃止されたが、第二次世界大戦以前はこれが小学校運動場設置の際の不文律として準拠されてきた。

 現在、屋外運動場の面積基準は学校種(幼・小・中・高)ごとの「設置基準」によって法定されている。しかし都市部の学校では十分な面積を確保できないのが実情であり、そのために屋上運動場が補助として使用されている。なお、屋内運動場は一般に体育館とよばれ、国庫補助の対象として面積基準が示されている。

 学校運動場は体育科教育の場であるだけでなく、児童・生徒の自由な遊び場でもあり、また特別活動や運動会などの学校行事にも広く活用されている。均衡のとれた身体の成長とその健全な保持に加え、運動場での遊びや集団活動を通して、協調性や自律性、自発性を育成することが期待される。したがって、施設の整備と使用については十分な教育的配慮が図られねばならない。

 運動場の位置は日当りのよい校舎の南側とし、周囲の植樹帯、教室との間の芝生や植え込みなどの環境整備、排水溝、足洗い場、水飲み場などの適正な配置、などのくふうが必要である。各種の遊具や競技用の設備も、学年を考慮して適切に配備されなければならない。また心身の発達段階に差異の大きい小学校では、低学年生(1~2年)の受ける圧迫や傷害防止のため、専用の遊び場が必要とされる。また、都市部の学校では表面をアスファルトなどによって舗装した土以外の運動場がみられる。これは砂埃(すなぼこり)の防止など学校環境面からの措置と考えられるが、むしろ児童・生徒の身体の発育に及ぼす影響や傷害防止の観点から慎重に検討されなければならない。舗装する場合でも、その硬さを考慮して弾力性のある舗装にする必要があるし、とりわけ傷害防止の観点からさまざまな配慮と対応が必要となる。

[笠間賢二]

公衆運動場

公衆運動場は、地方公共団体の公共運動場、余暇産業の商業的施設、企業の福利厚生施設として増加してきているが、いまだ十分な施設数に達しているとはいえない。国民の各ライフステージに応じたスポーツへの要求がとみに高まりつつある今日、国民のだれもが生涯の各時期にわたって、いつでも、どこでもスポーツを楽しむことができる「生涯スポーツ」の考え方も提唱されている。こうした要求に応えるためにも、体育・スポーツ施設の約6割を占める学校体育施設の地域住民への開放が求められている。学校施設の開放については1983年(昭和58)6月の文部省事務次官通知(「地域のスポーツ、文化、芸術の振興について」)によって促進策がとられたが、利用手続の煩雑さや利用方法などに関する情報提供の不足などから、いまだ地域の要求に十分に応えていないのが実状である。学校施設が地域の共有財産であるという観点にたてば、教育活動に支障がない限り、運動場を含めた学校体育施設が地域住民のスポーツやレクリエーション活動に積極的に開放されることが望まれる。その際、学校施設の安全管理のためにも、防犯対策に十分な配慮がなされなければならない。

[笠間賢二]

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