日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋エネルギー発電」の意味・わかりやすい解説
海洋エネルギー発電
かいようえねるぎーはつでん
海洋のさまざまな変化からエネルギーを得て発電を行うことの総称。発電の種類として、波力、海流、潮流、潮力、海洋温度差、海洋塩分濃度差をエネルギー源として利用した発電が可能とされている。
アメリカやカナダ、ヨーロッパ諸国では、波力や潮力を利用した海洋エネルギー発電が継続的に研究され、すでに実証段階にある技術もある。日本でも1970年代のオイル・ショック以降、海洋エネルギーを利用した発電方法が盛んに研究された時期があったが、石油やガスの価格が安定したこと、海洋での発電には長期間の実証実験や設備面での高いコストがかかることなどから、実用化には至らなかった。しかし海外の動向や、2011年(平成23)3月の東日本大震災の際に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故の影響もあり、日本での海洋エネルギー発電への取り組みが見直されつつある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO(ネド))による海洋エネルギーの発電潜在能力の試算では、年間で波力872億キロワット時、海流101億キロワット時、潮流59億キロワット時、海洋温度差1558億キロワット時で、これらを合算すると、原子力発電所の50基分に相当する。2011年度からはNEDOの海洋エネルギー技術開発事業が始まっている。海洋エネルギーを利用した発電は、2030年ごろから世界各国で普及期に入ると予測されており、洋上での風力発電と合わせ、海洋再生エネルギー利用の進展が期待される。
[編集部]