上げ潮で貯水池に海水を満たし、下げ潮で貯水池の海水を海に落とすときの落差を利用してタービンを回して発電すること。貯水池に海水が流れこむ際にもタービンを回すことはできる。潮汐(海面の上下運動)を起こすのは海水の水平方向の運動(潮流)であり、潮流で水車などを回すのは潮流利用であって、潮汐利用ではない。
人間活動は太陽の(見かけ上の)運行にほぼ支配されているが、潮汐はおもに月の運行に支配されている。そのため、潮汐発電の出力の日変動は電力需要の日変動と食い違ってしまうことが、潮汐発電の欠点とされていた。複数の貯水池を水門で結べば、この欠点はある程度解消するが、水門開閉の操作(時刻)が複雑なうえに、広い土地が必要となる。ポンプを使って貯水池に海水を汲み込み、貯水池の水位をさらに高めたり、貯水池から海水を汲み出して貯水池の水位をさらに下げる、という操作を適切に行えば、単一の貯水池であっても出力の変動はどのようにも変えられることが20世紀の中ごろにわかった。しかも、ポンプ使用によって余分に得られる電力は、ポンプ運転に費やされたエネルギーを上回る。しかし、大きな潮差があり、貯水池に適した地盤のよい広い土地がある所は限られているため、今日までやや大きな規模で利用しているのは、フランスの北西部を流れるランス川河口の発電所だけで、平均8.5メートルの潮差を利用する。ポンプ付きの単一貯水池で、10メガワットの発電機24基を備える。1966年に完成した。年間発電量は約550ギガワット時である。世界中を見渡すと、立地条件やコストなどから利用できそうな電力量は100ギガワット程度らしい。
[高野健三]
『高野健三著『海のエネルギー』(1984・共立出版)』
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(槌屋治紀 システム技術研究所所長 / 2007年)
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※「潮汐発電」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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