波浪エネルギーによる発電で、波浪の上下運動を利用するものと水平運動を利用するものとがある。発電装置の設置方式としては、海面に浮かべるものと防波堤などに固定するものとがある。波の1波長に含まれるエネルギーは波高の2乗に比例するが、発電にきくのは工率である。工率はエネルギーと波の速さの積である。波の速さは、波の形が進む速さ(位相速度)ではなく、エネルギーが進む速さ(群速度)である。世界中の波力を合計すると40ペタワット(ペタは10の15乗)くらい、人類が現在消費しているエネルギーのほぼ4000倍になる。地球に注ぐ太陽エネルギーのうち、雲などで反射して宇宙空間に戻る分を差し引いた残りは約120ペタワットである。世界中の海岸、および日本の海岸の近くに到達するエネルギーはそれぞれ2~3テラワット(テラは10の12乗)、30~50ギガワット(ギガは10の9乗)くらいらしい。装置の効率などを考えると、近い将来でも利用量はこの到達エネルギーの30分の1から20分の1を超えないだろうが、0.1テラワットでも、現在の世界の発電量の約10分の1である。日本では航路標識用のブイの電源として100ワットの波力発電装置が使われている。工業規模では日本でも外国でも波力発電はまだ実用に至らない。
[高野健三]
『高野健三著『海のエネルギー』(1984・共立出版)』
波のエネルギーを利用した発電。これまでいろいろなアイデアが提案されてきたが,現在実用化されているのは空気タービンを用いる方式である。波による海面の上下動をピストンとして用いて空気の流れを作り,空気タービンを回して発電機を駆動する。海岸に固定する方式と浮きをつけて浮遊させる方式がある。海岸などに固定する方式は,両端の開いた筒を岸壁などに固定する(図a)。波による海面の上下に応じて,筒内の海水面も上下して空気の流れができる。弁をつけることにより空気タービンの部分の空気流は一方向にすることも可能である。このような海岸固定式では三浦半島の海獺(あしか)島灯台(最大出力130W)に世界に先がけて1967年実用された。浮遊させる方式では浮き灯台として利用されることが多い(図b)。波に応じて筒が上下しても,筒内の海水面はそれと完全に一致して動くわけではない。したがって筒内に空気の流れが起きる。この方式は航路標識灯の電源などに実用されている。
執筆者:河野 照哉
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