改訂新版 世界大百科事典 「湯山三吟百韻」の意味・わかりやすい解説
湯山三吟百韻 (ゆのやまさんぎんひゃくいん)
室町時代の連歌。1巻。〈湯山〉のよみは〈ゆやま〉とも。1491年(延徳3)10月20日,宗祇とその高弟の肖柏,宗長を連衆として摂津国湯山(有馬温泉)で張行された〈賦何人連歌(ふすなにひとれんが)〉の通称。発句〈薄雪に木の葉色こき山路かな〉(肖柏),脇句〈岩もとすすき冬やなほみん〉(宗長),第三〈松むしにさそはれそめし宿出でて〉(宗祇)以下100句で,挙句は肖柏の〈一(ひと)むらさめに月ぞいさよふ〉。同じ連衆による3年前の《水無瀬三吟百韻(みなせさんぎんひやくいん)》とならんで宗祇一座の連歌の圧巻であるばかりでなく,作家として充実期を迎えた宗長の作風の開花ぶりのいちじるしいことも特色で,完成期連歌を代表する作品のひとつとして評価が高い。宗長の自筆本が伝存するほか,弟子の宗牧が宗長からの聞書を記し留めた注をはじめ古注数種の伝存することも貴重で,往年の連歌作品の享受ぶりを知るにも好個の作である。
執筆者:光田 和伸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報