室町後期の連歌師(れんがし)、歌人。中院通淳(なかのいんみちあつ)の子、また内大臣通秀(みちひで)の弟。早く出家して肖柏と称し、宗祇(そうぎ)に従って和歌、連歌を学ぶ。正宗龍統の門に出入りして禅学の素養もあった。応仁(おうにん)の乱と前後して摂津国池田(大阪府)に住んで京都との間を往還し、さらに晩年を和泉国(いずみのくに)堺(さかい)(大阪府)で送り、宗祇よりの古今伝授(こきんでんじゅ)を堺の門人の間に伝えた。大永(だいえい)7年4月8日没。牡丹花(ぼたんか)、夢庵(むあん)、弄花(ろうか)などの別号をもち、風流な生活のさまは『三愛記(さんあいのき)』にみえる。宗祇、宗長との百韻連歌『水無瀬三吟(みなせさんぎん)』『湯山(ゆのやま)三吟』は著名。歌集、連歌集ともに『春夢草(しゅんむしょう)』と名づける。連歌新式の改訂増補を果たした功も大きい。ほかに『源氏物語弄花抄』『伊勢(いせ)物語肖聞(しょうもん)抄』『古今集古聞』などの古典注釈の書がある。
[島津忠夫]
『木藤才蔵著『連歌史論考 下』(1973・明治書院)』
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(伊藤伸江)
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1443~1527.4.4
室町中期~戦国期の歌人・連歌師。中院(なかのいん)家の出身。号は夢庵・牡丹花(ぼたんか)・弄花軒(ろうかけん)。早くに出家して正宗竜統に禅を学び,30歳の頃から宗祇(そうぎ)に師事。後土御門(ごつちみかど)天皇の内裏連歌にも参加。応仁・文明の乱の頃には摂津国池田に住み,たびたび京都にも出たが,1518年(永正15)和泉国堺に移り,同地で没した。「水無瀬(みなせ)三吟」「湯山(ゆやま)三吟」などの連歌作品のほか,「連歌新式追加并新式今案等」「六家抄」の編著や,自撰歌集・連歌句集「春夢草」が残る。古典研究にもすぐれ,宗祇からうけた古今伝授を堺の門人に伝えたことは,のちに堺伝授とよばれた。
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…以後,鎌倉から南北朝ごろまで河内本が優位を占め,それ以後は青表紙本がそれに取って代わるようになった。近世の流布本も青表紙本系であるが,それは河内本がかなり混入した肖柏本系の本が主で,純粋な青表紙本を重んずる立場から,現在では《湖月抄》(《源氏物語湖月抄》)のような近世流布本を敬遠して,古写本の中から善本を求めることとなり,〈大島本〉(平安博物館)などが重んぜられている。零本の類では,平安朝古写の《源氏物語絵巻》詞書や,前田家蔵定家筆の柏木・花散里両巻,定家筆本を臨模した明融本(その中の9巻)などがある。…
…常縁はこれを連歌師の飯尾宗祇に相伝し,以後この系統が古今伝受の正当とみなされ尊重されてゆく。この後,宗祇はこれを三条西実隆,近衛尚通(ひさみち),牡丹花肖柏などに相伝し,ここで古今伝受は三流に分かれる。すなわち,実隆と尚通に相伝された古今伝受は,そのまま三条西家,近衛家において受け継がれ家の秘伝となり,肖柏に相伝された古今伝受は,宗訊,宗珀など連歌師に伝えられ堺伝受,奈良伝受となっていった。…
…わび茶との関係が深く,庭園は古田織部の作と伝えて,泉石の配置の妙で知られ,千利休遺愛の手水鉢もある。また境内には利休のわび茶の師武野紹鷗(たけのじようおう),利休の一門,連歌師の牡丹花肖柏(ぼたんかしようはく)など,錚々たる堺の町衆文化人の墓がある。【藤井 学】。…
…1巻。後鳥羽院の水無瀬の廟に奉納するために,宗祇とその高弟の肖柏,宗長を連衆(れんじゆ)として,1488年(長享2)正月22日の院の月忌に山城国山崎で張行された〈賦何人連歌(ふすなにひとれんが)〉の通称。宗祇の発句〈雪ながら山もとかすむ夕かな〉および宗長の挙句〈人をおしなべみちぞただしき〉は,それぞれ《新古今和歌集》所収の院の〈見わたせば山もと霞む水無瀬河夕は秋となに思ひけむ〉(巻一),〈おく山のおどろがしたもふみわけてみちある代ぞと人に知らせむ〉(巻十七)を本歌とする。…
…〈湯山〉のよみは〈ゆやま〉とも。1491年(延徳3)10月20日,宗祇とその高弟の肖柏,宗長を連衆として摂津国湯山(有馬温泉)で張行された〈賦何人連歌(ふすなにひとれんが)〉の通称。発句〈薄雪に木の葉色こき山路かな〉(肖柏),脇句〈岩もとすすき冬やなほみん〉(宗長),第三〈松むしにさそはれそめし宿出でて〉(宗祇)以下100句で,挙句は肖柏の〈一(ひと)むらさめに月ぞいさよふ〉。…
…1巻。《応安新式》に,1452年(享徳1)に一条兼良が宗砌(そうぜい)の意見を徴して成った《新式今案》を加え,さらに1501年(文亀1)に肖柏が改訂をほどこしたもので,正式には《連歌新式追加並新式今案等》と称し,以後長く連歌の規範とされた。ただし実際には,室町末期ころから式目はより細かく煩雑なものとなっていった。…
※「肖柏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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