改訂新版 世界大百科事典 「準地代」の意味・わかりやすい解説
準地代 (じゅんちだい)
quasi-reut
工場や機械のような固定設備は,長期的にはその投入量を変化させることが可能であっても,短期的にはその量が所与と考えられる。このような短期的にその投入量が固定的である生産要素に対する所得を,それらの生産要素の準地代と呼ぶ。固定設備は長期的には可変的であり,その所有者である企業になんらの特別の報酬をももたらさない(すなわち競争によって,固定設備から得られる収入は固定設備を購入するための費用に等しい)。しかし短期的には,固定設備はすでに生産過程に投入されている。したがって固定設備以外の投入物に必要な費用(可変費用)を賄えるかぎり,つまり,収入と可変費用(固定費用・可変費用)との差である生産者余剰がマイナスでないかぎり生産は行われる。この生産者余剰は固定設備に対する報酬とみなされ,その購入費用・利子費用とは一般には一致しない。これはあたかも供給が非弾力的な土地の所有者に対する報酬すなわち地代と同等な性格であり,A.マーシャルが準地代と名づけたゆえんである。
執筆者:奥野 正寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報