改訂新版 世界大百科事典 「固定費用可変費用」の意味・わかりやすい解説
固定費用・可変費用 (こていひようかへんひよう)
fixed cost, variable cost
財やサービスの生産に必要な費用の中身は,大別して固定費用と可変費用(変動費用ともいわれる)とに分けられる。固定費用とは,財・サービスの生産量にかかわりなく,つねに一定額だけは支払わねばならない費用を指す。工場の土地を借りている場合には,そこの工場でどれだけ製品を生産するかにかかわらず,前もって契約で決められた一定額の地代を支払わねばならない。このような費用を固定費用といい,工場がすでに所有している機械・設備の償却費,本部職員の給料,固定資産税などもこれに含まれる。これに対し,生産量の増減に伴って直接変化する費用を可変費用という。原材料費や賃金などのように,生産量を増やすときには,その投入を増加させなければならないような生産要素に対する費用がこれにあたる。固定費用,可変費用の概念は,経済学における時間の概念と密接に関係している。すなわち,工場の規模や数の変更ができず,原材料や労働者のような可変費用に対応する生産要素しか増減することができないような期間を〈短期〉,固定費用に対応する生産要素も変更することができるような期間を〈長期〉という。逆にいえば,長期においては,工場などの固定設備も増減することができるので,固定費用は存在せず,可変費用となる。なお,固定費用と類似の概念に,共通費用overhead cost(間接費用ともいわれる)がある。固定費用と同じ意味で用いられることも多いが,とくに多数製品を生産している場合や,同一製品を異なった市場に供給している場合に,特定の製品もしくは市場に直接的に結びついていないような費用を指して用いられる。
執筆者:後藤 晃 なお,会計学では固定費用,可変費用(変動費用)と同様の概念を,それぞれ固定費,変動費という。
執筆者:前田 貞芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報