取引不振、景気後退、予測はずれなどの原因によって企業内に発生した正常在庫量を上回る手持ち商品のこと。企業が円滑に運営されるためには、その業種や規模に応じて適当な量の原材料・半製品・製品を抱えていなければならない。このような適正量の在庫を正常在庫または適正在庫という。前記の理由により、主として製品について正常在庫を上回った分を一般に滞貨という。滞貨が個別企業の特殊事情により発生した場合は、その企業の経営に影響が出るだけであるが、不況のような構造的な事情によるときは、その影響は社会的なものとなる。この関係を逆に利用し、多くの企業の在庫状況から景気の動向を分析する試みがなされる。滞貨を抱えて苦境に陥った企業(滞貨企業)を放置すると、倒産などにより影響が深刻化する危険がある。そのため、滞貨処理に必要な資金手当てが行われることがある。これを滞貨金融という。
[森本三男]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報