ストック(読み)すとっく(英語表記)stock

翻訳|stock

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストック」の意味・わかりやすい解説

ストック(アブラナ科)
すとっく
stock
[学] Matthiola incana R.Br.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の半耐寒性多年草。アラセイトウともいう。通常は一年草として扱う。南ヨーロッパ原産。高さ約60センチメートル。葉は木質化した茎に多数つき、披針(ひしん)形で灰緑色、白毛に覆われる。原種の花は同じくアブラナ科のダイコンに似た紫色の4弁花で、小さく、長い総状に開花する。強い芳香があり、ことに夜、よく香る。未熟な若莢(さや)は細長い棒状で食用に供されるというが、現在は利用されていない。品種改良によりさまざまな形態のものがあり、葉に毛茸(もうじ)のない濃緑色のもの、枝の出ない一本立ちのもの、あるいは矮性(わいせい)種などがある。花色も赤、桃、紫、青、淡黄、白色など、豊富である。花形大輪八重咲きも作出され、長い筒状の穂になって開花する。現在よく栽培される八重咲きの系統も八重咲きの株からはまったく種子がとれないので一重咲きの株から採種するが、これを播(ま)くと、一重と八重が半々に出る。八重咲きをつくるには、一重咲きと八重咲きの株では葉の形など小苗のときから微妙な相違があるので、間引きをし、八重咲きの株だけを残して育てる。秋、冬、春を通し、切り花に多く用いられる。栽培はビニルハウスか海岸近くの暖地露地で行う。苗づくりがむずかしく、冬の寒さにも弱いので、一般家庭で栽培するのはむずかしい。

[伊藤秋夫 2020年11月13日]

文化史

中世までに園芸化された。16世紀末ごろにはイギリスではたいていの庭でみられるようになり、花色の違いがあると、ジェラードJohn Gerardは書き留めている(『The Herball』1597)。1611年には、トラデスカントJohn Tradescantによって八重咲きが記録された。当時のイギリスでは、ストック・ジロ・フラワーstock-gilo-flowerとよばれたが、ジロ・フラワーとはクローブ丁字(ちょうじ))やクローブカーネーションのことで、それらに似たよい香りがするが、クローブカーネーションより茎(ストックstock)が目だつので、ストックの名が冠せられ、のちに略称されストックになった。日本には江戸時代の寛文(かんぶん)年間(1661~1673)に渡来した(『花壇地錦抄附録(かだんちきんしょうふろく)』1733)。アラセイトウの名は茎葉の白い毛を羅紗(らしゃ)に見立てた羅紗のポルトガル語ラセータraxetaに基づく。

[湯浅浩史 2020年11月13日]



ストック(火成貫入岩体)
すとっく
stock

火成貫入岩体の名称の一つで、岩株(がんしゅ)ともいう。周辺の地層の構造とは不調和で、形態はかなり不規則である。直径10キロメートル以下の小型のもの。中粒ないし粗粒の、中性ないし塩基性岩類(石英閃緑(せんりょく)岩、閃緑岩、斑糲(はんれい)岩など)のものが多く、また花崗(かこう)閃緑岩類のものもある。

[矢島敏彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストック」の意味・わかりやすい解説

ストック
Stock, Alfred

[生]1876.7.16. ダンチヒ(現グダニスク)
[没]1946.8.12. カルルスルーエ
ドイツの化学者。ベルリン大学で化学を学ぶ。卒業後同大学で研究を続けたのち (1900~09) ,ブレスラウ無機化学研究所所長 (09) ,ベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所所長 (16) ,カルルスルーエ化学研究所所長 (26) 。ドイツ化学会会長 (36~38) 。水素化ホウ素,水素化ケイ素類の先駆的研究,そのための超高真空分離法の開発で知られる。また各種研究・教育機関の組織化,拡張に尽力し,ドイツ化学,化学教育の発展に貢献した。

ストック

アラセイトウ」のページをご覧ください。

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