倒産(読み)トウサン

デジタル大辞泉 「倒産」の意味・読み・例文・類語

とう‐さん〔タウ‐〕【倒産】

[名](スル)
企業が経営資金のやりくりがつかなくなってつぶれること。企業が不渡手形などを出して銀行から取引停止を受け、営業困難に陥ること。「不況で倒産する」
赤ん坊逆子さかごで生まれること。
[類語]破産廃業経営破綻潰れる倒れる

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共同通信ニュース用語解説 「倒産」の解説

倒産

企業が業績不振などで資金繰りに行き詰まり、経営を継続できなくなった状態を指す。資産や負債を清算し、法人格が消滅する「破産」が最も多い。手形や小切手の決済ができない「不渡り」となって、銀行取引が停止された場合も一定の条件で倒産とみなされる。民事再生法会社更生法の適用を受けて、事業を続けながら再建を目指す手法もある。

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精選版 日本国語大辞典 「倒産」の意味・読み・例文・類語

とう‐さんタウ‥【倒産】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 事業に失敗したりして、財産を使い尽くすこと。財産を使い果たして企業がつぶれること。破産。分散。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
    1. [初出の実例]「己れが関係せる銀行の倒産(タウサン)に余義なくせられしを聞かば」(出典:緑蔭茗話(1890‐91)〈内田魯庵〉)
  3. 出産の時、赤ん坊が足の方から生まれること。さかご。〔婦人良方‐揚子建十産論〕

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改訂新版 世界大百科事典 「倒産」の意味・わかりやすい解説

倒産 (とうさん)

企業が経営に行き詰まり,正常な営業活動の継続ができなくなった〈企業の破局〉状態をいう。具体的には,(1)決済資金の裏づけがないため不渡り(その手形,小切手を不渡手形という)を出した法人または個人企業が6ヵ月以内に2回目の不渡手形を出して銀行取引停止処分を受けることにより表面化することが多い。そのほか,(2)会社更生法の適用を申請したり破産申請をしたとき,(3)商法381条による会社整理和議法による整理状態になったとき,(4)債権者会議を開催し内整理(これは法律によるものではない)を行ったとき,を倒産というが,倒産という言葉は法律用語でも学問用語でもない。ただし中小企業信用保険法には倒産という言葉が用いられている。

 倒産の原因はほとんどが経営の不振による資金繰りの悪化であるが,なかには黒字経営でありながら火災,事故等により起こる黒字倒産や,労働者と経営者の折合いがつかずに起こる労務倒産と呼ばれるものもある。

 倒産統計には,(1)全国銀行協会連合会(全銀協)が銀行取引停止処分者のうち資本金100万円以上の法人と負債金額1000万円以上の個人について1964年10月以降毎月発表しているもの,(2)民間調査機関である東京商工リサーチおよび帝国データバンク(両社については〈興信所〉の項参照)が負債金額1000万円以上の法人および個人企業について,それぞれ1952年,64年から毎月発表しているものがある。なお,これらの倒産統計は原因別,業種別に把握されている。また,最高裁判所の統計として和議,清算,破産,会社更生法適用申請等の件数が毎月公表されている。前記倒産統計は企業の蹉跌(さてつ)状況をとらえ,裁判所統計は法的な事後処理状況を示している。倒産統計に数えられた企業でも,名義変更や会社更生法適用の後,引き続き営業活動を行っているものも少なくない。会社更生法は,倒産しても再建の見込みのある会社について,債権者,株主その他の利害を調整しながら更生を図るという制度であり,この法が適用された企業は債務が棚上げされる等の再建のための時間的猶予が与えられる。

 倒産件数は必ずしも不況のときに増加するわけではない。不況のときには経営不振となる企業は増加するであろうが,一方,企業の誕生も減少するからである。たとえば,1960年代前半から80年までの倒産件数の推移をみると,好況期の1960年代後半に増えつづけているのに対し,不況期の71年や77-78年にはむしろ減少している。この理由の一つは倒産の多くが中小企業であるためである。倒産件数のうち資本金1000万円以上の企業は10%強にすぎず,5000万円以上となると1%にも満たない。好況時には多くの企業が誕生するが,そのなかには企業体力が非常に弱いものも含まれているために,ちょっとした原因で倒産しやすく,このために好況時に倒産が増加するのである。経営の未熟さ,経営計画のずさんさ,経営者の内紛などで倒産する中小企業が多い。とくに建設業や卸・小売業だけで倒産の過半数を占めているが,電話と机があれば簡単に創業できる代りに,簡単に倒産する傾向が強い。他方,大企業の倒産は1965年の山陽特殊製鋼,71年の佐藤造機,74年の日本熱学工業,75年の興人,78年の永大産業等の例が示すように,金融引締めや不況がその原因になっており,通常,不況期に多い。なお,大型倒産が出ると子会社や取引先企業等の関連企業の連鎖倒産が起こるなど社会的問題も大きいため,大型倒産に際しては会社更生法が適用されることが多い。

 企業が赤字であっても,銀行等から資金を調達し,企業活動に必要な支払を続けることができるかぎり倒産しない。支払に必要な資金をやりくりすることを資金繰りと呼ぶが,売上代金の回収が滞ったり,こげついたりすると資金繰りが悪化し,不渡手形を出してしまい(銀行取引の停止),倒産に至ることが多い。
破産
執筆者:

前述のように,倒産は法律上の用語ではない。倒産の事態においては債権者等関係人間の利害の対立が激しいため,放置すれば無秩序と強者横暴の場となりかねない。そこに,公的な制度によって倒産処理に備える必要があり,いずれの国も各種の倒産手続を用意し,これを裁判所に担当させている。

 倒産手続の理念は,公明,公正(債権者平等の実現),適正(債務者の保護)かつ迅速な倒産処理にあるが,その方法には,倒産に瀕(ひん)した経済活動を清算して終わらせてしまうもの(清算型)と,これを維持しつつ再建を図ろうとするもの(再建型)に分かれる。日本には前者にあたるものとして破産法による破産と商法による特別清算(〈清算〉の項参照)があり,後者にあたるものとして,破産法による強制和議,和議法による和議,商法による会社整理,および会社更生法による会社更生がある。なお,このほかこのような裁判的手続によらないで,利害関係人の話合いで倒産処理をすることもでき,これを私的整理(内整理,任意整理ともいう)と称する。実際には大部分の倒産事件は私的整理によって処理されており,これにも清算型と再建型がある。

 諸外国にも基本的には同様の倒産処理制度がある。最も古いのは破産であり,中世イタリアの商人社会の法制度として発達を遂げたものがヨーロッパの各国に広がった。そのため今日でも破産は商事に関する法制であるとのとらえ方をする国が多い(英米法,フランス法系諸国)。往時には破産は一種の懲罰の制度としての色彩が濃かったが,徐々に緩和され,また破産を回避する手段としての和議の制度が発達した。他方イギリスでは破産による旧債の免責の制度が発生し,アメリカで大いに発展をみた。これによって破産は倒産者の懲罰や債権取立ての制度から倒産者の救済のための制度へと性格を変じたのである。

 日本の立法史をみると,1890年にフランス式の破産制度が作られ(旧商法),商人のみを対象としたが,1922年の現行破産法はドイツ法を範とし,商人・非商人を問わず対象とすることとなった。また同年にオーストリア法を範として和議法が作られた。38年にはイギリス法の影響のもとに会社整理と特別清算が創設され,戦後になってアメリカ法の影響のもとに52年に破産免責の制度が導入されたほか,アメリカで発展をみた会社更生が立法化された。このように,日本の倒産法制は,ヨーロッパ法のうえに英米法の色彩を混ぜ合わせたユニークな様相を呈している。

各倒産手続はそれぞれその目的や適用対象を異にするのはもちろんであるが,その成立の沿革や時代を異にするため,互いに統一のとれない部分が少なくなく,外国でみられるような一つの倒産法典といったもので各種の手続を統一的に規定することが望まれる。現存の各倒産手続の特色および利用の動向は次のとおりである。

 破産はすべての個人・法人に適用があり,破産原因がある場合に破産宣告により開始される。破産原因は支払不能,会社については債務超過であり,支払停止は支払不能と推定される。倒産の徴憑として典型的な手形不渡りは支払停止の最も普通の形態であり,新聞等で倒産と報じられる場合は,おおむね破産原因がある。破産は債権者が申し立てる場合と債務者自身の申立てによる場合(自己破産)があり,近年注目すべきことは自己破産の著しい増加である。これは消費者金融によって破綻(はたん)した個人が破産制度を利用しはじめたことによるもので,かねてアメリカにおいて顕著にみられた現象であり,免責制度とあいまって,日本においても破産の債務者救済制度としての性格が明らかとなりつつあるといえる。破産者に財産がある場合には破産管財人(原則として弁護士)が選任されて財産を処分し,換価金を債権者に按分弁済(配当)するが,通常その率はきわめて低い。

 和議は財産を換価清算することなく債権者の譲歩によって再建案(和議条件)を策定することを骨子とする。破産手続の一部をなす強制和議は,すでに破産宣告があった後に破産者が和議条件を提示し,債権者が多数決(債権額の4分の3)によってこれを可決すると成立し,これによって破産による清算が回避される。多数決によって少数者をも拘束できるので〈強制〉の名があるが,この点は和議法による和議も同様である。こちらは破産宣告前に債務者の申立てにより和議を成立させ破産宣告を回避しようとするものである。和議条件は債務の一部を免除し残部を分割払いとするものが多いが,その履行が完全になされる例は少ないといわれる。もともと破産原因を生ずるまで破綻していること,担保権者が和議によって拘束されず自由に権利行使に出られることによる。これに対し,株式会社のみに適用がある会社整理は,破産原因を生ずるおそれのある段階で開始でき,かつ担保権者にも一定の制約を加えることができる利点があるが,再建案の成立に債権者全員の同意を得なければならない点で和議より困難な面がある。和議法による和議および会社整理においては債務者またはその経営者がその地位を失うことなく再建を図れるためかなり利用されているが,それだけに財産の保全の点では問題がある。

 これらの欠点を除去し,危機に瀕した大型株式会社企業の再建をもくろむのが会社更生であり,その特色は,更生管財人による全権限の掌握,担保権者の権利行使の停止と権利変更,債務超過の場合の100%減資と新株発行による株主(資本)構成の変革,租税債権に対する制約,等にみられる。再建案たる更生計画は和議と同様関係人の多数決により決せられるが,和議と異なりその実行も管財人の手で行われる。従来の取締役は原則として交替し,再建が成功しても復帰することはないのが原則である。最後に特別清算はすでに解散して清算に入った株式会社に債務超過などの理由があるときに開始され,債権者の多数決による協定に従って清算を行う。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「倒産」の意味・わかりやすい解説

倒産
とうさん
bankruptcy

企業が経営に行き詰まり、つぶれること。倒産という用語は、専門語のような語感をもっているが、それ自体は法律用語でも経済・経営用語でもなく、企業が経営に行き詰まってつぶれるに至った状況を総称する一般用語にすぎない。倒産にはさまざまな原因があるが、一つの見方は、不足もしくは欠落した経営資源によって倒産をとらえるものである。たとえば、必要な人員がそろわなかったため、所期の経営活動が展開できず、そのために倒産に至ることを労務倒産というようなケースである。しかし、倒産といえば、まずそのすべてが財務的破綻(はたん)すなわち資金の不足によるものといってよい。したがって、財務倒産というような特別な表現は普通用いられない。

 一般に倒産とよばれているのは、次のうちのいずれかの状態に企業が陥ったことをいう。第一は、不渡手形を出して銀行取引が停止された状態である。1回目の不渡りでは銀行取引は停止にならず、2回目で停止となる。つまり、銀行取引停止は、重大な資金不足の徴候である。第二は、会社更生法の適用申請である。会社更生法は、経営が行き詰まって窮地にあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者や株主などの利害を調整しながら会社の事業は継続させ、その更生を図ることを目的にした法律である。会社(ときには大口債権者または大株主)が裁判所に更生手続開始を申請し、決定が出ると、管財人が選任され、更生計画をたて、裁判所の認可を受けて再建に乗り出すことになる。第三は、民事再生法の適用申請である。民事再生法は、経済的に窮境にある債務者(法人および個人)について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、債務者と債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、債務者が早期に再生を図ることを目的とした再建型倒産処理手続である。第四は、会社法510条以下による特別清算である。それは会社が支払不能または債務超過に陥る危険があるときに、会社(ときには債権者、株主、監査役)の申立てにより、裁判所の命令と監督のもとに行われる会社の清算である。第五は、法律によらない内整理(うちせいり)に入る状態である。内整理とは、企業がたとえば減資等により自主的に欠損状況の回復を図ることをいう。最後に、裁判所により破産宣告がなされた場合である。

 倒産に対する現代の考え方は、可能な限り再建の方向へ誘導するというものであり、それは、企業が発展して社会性が高まり、利害関係者が多数化したからである。

[森本三男]

『安藤一郎著『現代倒産法入門』(2001・三省堂)』『高木新二郎著『新倒産法制の課題と将来』(2002・商事法務)』『太田三郎・岡崎一郎著『企業倒産と再生』(2002・商事法務)』『谷口安平・山本克己・中西正編『新現代倒産法入門』(2002・法律文化社)』

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普及版 字通 「倒産」の読み・字形・画数・意味

【倒産】とうさん

逆子。

字通「倒」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の倒産の言及

【私的整理】より

…裁判所手続によらず関係人の話合いによって倒産処理を行うこと。内整理(ないせいり),任意整理ともいう。…

※「倒産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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