日本大百科全書(ニッポニカ) 「濁れる川」の意味・わかりやすい解説
濁れる川
にごれるかわ
窪田空穂(くぼたうつぼ)の歌集。1915年(大正4)国民文学社刊。空穂は1907年(明治40)ごろから自然主義の影響のなかで小説を書き、一時ほとんど作歌を離れる。『空穂歌集』(1912)をまとめたのはそのためであった。しかし実質的には10年から作歌に復帰、『国民文学』創刊(1914)以後は、いっそう作歌中心となる。本集は散文作家をくぐったあとの、容赦ない自己への分け入り方、散文を領略するともいうべき手法に新生面を示した集で、後の境涯詠への出発をなす。
[武川忠一]
わが重きこころの上によろこびのまぼろしなして燕(つばめ)飛べるも
『『窪田空穂全歌集』全一冊(1981・短歌新聞社)』