空穂(読み)うつぼ

精選版 日本国語大辞典 「空穂」の意味・読み・例文・類語

うつぼ【空穂・靫】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 矢の容器。雨湿炎乾に備えて矢全体を納める細長い筒で、下方表面に矢を出入させる窓を設け、間塞(まふたぎ)と呼ぶふたをつける。竹製、漆塗りを普通とするが、上に毛皮や鳥毛、布帛(ふはく)の類をはったものもあり、また、近世大名行列威儀を示すのに用いられ、張抜(はりぬき)で黒漆塗りの装飾的なものとなった。江戸時代には紙の張抜(はりぬき)の黒漆塗りに金紋を据え、飾調度(かざりちょうど)とした。うつお。
    1. 逆頬空穂 大和空穂
      逆頬空穂 大和空穂
    2. [初出の実例]「主従ともに狩装束にて、うつぼをぞおへりける」(出典:古今著聞集(1254)九)
  3. 多毛な男根をいう、近世の隠語
    1. [初出の実例]「痱(いぼ)まらあれば半皮あり。空穂(ウツボ)あればすぼけあり」(出典:滑稽本・風来六部集(1780)痿陰隠逸伝)
  4. うつぼがい(靫貝)」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「空穂」の意味・わかりやすい解説

空穂
うつぼ

戦闘や狩猟の際、矢が雨露にぬれたり物に触れて破損するのを防ぐための矢入れ具の一種。羽壺、靭とも書く。植物の穂の形をしており、中が空洞になっているもので、その形はのように下部は箙(えびら)の式に似ており、矢を盛る口を竈(かまど)という。穂部にかける皮を懸(かけ)皮といい、鹿(しか)、熊(くま)、虎(とら)、豹(ひょう)、猿などの皮を使うことを正式とするが、そのほかに塗空穂、騎馬空穂、大和(やまと)空穂、土俵空穂などの種類がある。空穂に盛る矢は7本、9本、11本が一般的であるが、土俵空穂のように多量運搬を目的とする特大のものもあった。空穂は平安時代末期にすでにあったが、室町時代に入り箙が廃れるとともに当時の武士は盛んにこれを使用した。

[入江康平]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「空穂」の意味・わかりやすい解説

空穂
うつぼ

靫とも書く (靭は後世誤用) 。平安時代以降に用いられたへちま形の盛り矢具で,腰につける。へちま形の筒状の下方に矢を出納する口があり,ふたがついている。『古今著聞集』『東鑑 (あずまかがみ) 』にその名がみえ,『後三年合戦絵巻』に描かれているがそれ以前は明らかでない。南北朝~室町時代のものに塗空穂,安土桃山・江戸時代のものに土俵空穂がある。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「空穂」の解説

空穂 (ウツボグサ)

植物。ユリ科の多年草,園芸植物,薬用植物。ネギの別称

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