日本大百科全書(ニッポニカ) 「点と線」の意味・わかりやすい解説
点と線
てんとせん
松本清張(せいちょう)の処女長編推理小説。1957年(昭和32)2月~58年1月『旅』に掲載。58年2月、光文社刊。九州博多(はかた)の香椎潟(かしいがた)で発生した、一見完璧(かんぺき)に近い動機付けをもつ心中事件の裏に潜む恐るべき奸計(かんけい)。汚職事件に絡んだ複雑な背景と、殺害時刻に容疑者は北海道にいたという鉄壁のアリバイの前に立ちすくむ捜査陣。時刻表を駆使したトリックとアリバイ崩しにポイントがあり、トラベル・ミステリー流行のきっかけともなった。さらに日常的な犯罪動機と着実なアリバイ追及と同時に、巨大な権力・組織悪に対する批判的視点が、推理小説に新次元を拓(ひら)いた。
[山崎一穎]
『『点と線』(新潮文庫)』