点と線(読み)てんとせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「点と線」の意味・わかりやすい解説

点と線
てんとせん

松本清張(せいちょう)の処女長編推理小説。1957年(昭和32)2月~58年1月『旅』に掲載。58年2月、光文社刊。九州博多(はかた)の香椎潟(かしいがた)で発生した、一見完璧(かんぺき)に近い動機付けをもつ心中事件の裏に潜む恐るべき奸計(かんけい)。汚職事件に絡んだ複雑な背景と、殺害時刻に容疑者は北海道にいたという鉄壁アリバイの前に立ちすくむ捜査陣。時刻表を駆使したトリックアリバイ崩しにポイントがあり、トラベル・ミステリー流行のきっかけともなった。さらに日常的な犯罪動機と着実なアリバイ追及と同時に、巨大な権力・組織悪に対する批判的視点が、推理小説に新次元を拓(ひら)いた。

[山崎一穎]

『『点と線』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 新潮文庫

世界大百科事典(旧版)内の点と線の言及

【推理小説】より

…戦前は推理小説の女性愛読者は少なく,女性作家は皆無に近かったが,57年仁木悦子が応募した《猫は知っていた》が第3回江戸川乱歩賞を得てから,続々と女性による傑作が発表され,この点でもイギリス,アメリカの水準に達したといってよい。女性読者の数も松本清張の《点と線》(1958)の驚異的ブーム以後,飛躍的に増大しつつある。この二つの現象は今後も変わることなく続くと考えられる。…

※「点と線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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