無毛症または乏毛症(読み)むもうしょうまたはぼうもうしょう(その他表記)Atrichia or Hypotrichosis

六訂版 家庭医学大全科 「無毛症または乏毛症」の解説

無毛症または乏毛症
むもうしょうまたはぼうもうしょう
Atrichia or Hypotrichosis
(皮膚の病気)

どんな病気か

 生まれつき毛がまったく生えないか、あるいは少ない病気です。生まれた時は普通の人と同じように頭の毛があるのに、生後1~2年で抜け落ちて生えてこない病気もあります。頭部全体に毛がない全頭無毛症(ぜんとうむもうしょう)と、頭部の一部分に毛がない限局性無毛症(げんきょくせいむもうしょう)があります。

原因は何か

 先天的に全頭無毛になる遺伝性の疾患が数多くあります。このような疾患では毛の発生、成長に必要な遺伝子変異があり、無毛あるいは乏毛になっています。どの遺伝子にどのような異常があるのかは最近次々とわかってきています。

 限局性無毛症になる疾患としては脂腺母斑(しせんぼはん)先天性皮膚形成不全症(せんてんせいひふけいせいふぜんしょう)などがあります。

症状の現れ方

 先天性無毛症では精神発育遅滞(せいしんはついくちたい)を伴う場合があります。外胚葉(がいはいよう)形成異常症では無毛あるいは乏毛とともに汗腺、爪、歯牙(しが)皮膚などにもさまざまな異常が現れます。

 脂腺母斑では、出生時には境界の明瞭な毛のない部分があります。思春期になるとその部位が黄色くなり、表面はでこぼこに隆起してきます(図98)。

 先天性皮膚形成不全症は、頭頂部に多く発生します。大きさは1~3㎝くらいです。出生時に毛のないへこんだ病変として発見されます。出生時にはまだ皮膚が潰瘍のままのこともあります。

検査と診断

 多くの先天性無毛症や乏毛症の遺伝子異常がわかってきています。今後は遺伝子診断が行われるようになるでしょう。

治療の方法

 先天的無毛症に対する治療法は、現時点ではありません。かつらを使うことで見た目を整えることができます。脂腺母斑や先天性皮膚形成不全症が原因の限局性無毛症では、手術で病変部の皮膚を切除することで無毛部位はなくなります。

病気に気づいたらどうする

 生まれつき頭の毛が極端に少ない場合や、出生時にはあった毛が抜け落ちてから生えてこない場合は、皮膚科専門医の診察を受けることが必要です。無毛や乏毛が遺伝性疾患の発見の手がかりになることがあります。

 限局性の無毛や乏毛にもいろいろな原因があります。やはり、皮膚科専門医の診察を受けることが必要です。

嵯峨 賢次


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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