無糸分裂(読み)ムシブンレツ

関連語 名詞

日本大百科全書(ニッポニカ) 「無糸分裂」の意味・わかりやすい解説

無糸分裂
むしぶんれつ

染色体や紡錘体などの構造変化なしに核がくびれて分裂することをいい、普通の有糸分裂に対する語である。無糸分裂は、子宮の脱溶膜、筋細胞などで観察されているが、生体観察ではみられていないので、現在では変性した細胞の退行的現象と考えられている。また、核の内部で有糸分裂がおこって染色体が倍加する核内有糸分裂endomitosisが先行した場合、見かけ上無糸分裂に似た現象がおこることがあるが、これを偽無糸分裂とよんでいる。有糸分裂を阻害する薬品によって染色体が破損したり融合したりした場合にも、無糸分裂のような顕微鏡下の像が現れることがある。

[大岡 宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無糸分裂」の意味・わかりやすい解説

無糸分裂
むしぶんれつ
amitosis

直接分裂 direct divisionともいう (→有糸分裂 ) 。細胞の核分裂において染色体,紡錘糸の形成を伴わない分裂。ハツカネズミの腱,コオロギ卵巣軟骨,培養した白血球,ムラサキツユクサの茎などの細胞でみられる。核はくびれるようにして2個になる。特異な形の有糸分裂との考えもあるが,むしろ退行的,病的な細胞にみられるとされる。

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世界大百科事典(旧版)内の無糸分裂の言及

【核】より

…続いて起こる細胞質分裂によって新しい核をもつ二つの娘細胞ができあがる(有糸分裂)。一部の下等な真核細胞では,長く伸びた分裂核は中央でくびれて2個の娘核となり,その間,核膜が無傷のまま分裂は完了する(無糸分裂)。また,原生動物の繊毛虫には大核と小核があり,大核は細胞の生活機能を支配する遺伝情報の発現を活発に行うのに対し,小核は遺伝子の完全なセットを子孫に伝えるためのストックであり,接合に際し,分裂して静止核と移動核をつくり,移動核を交換して合核を形成する。…

【細胞分裂】より

…一つの核がこのように二つの娘核になることを核分裂という。核分裂は従来,染色体や紡錘体のような糸状構造が現れる有糸分裂mitosisと,明確な形態変化が現れないまま核が二つにくびれる無糸分裂amitosisに分けられていたが,現在では後者は原核細胞では正常な分裂だが,真核細胞では病的細胞における退行的現象とみなされるようになっている。核分裂に引き続いて細胞質もそれぞれの核を含んで分かれる。…

※「無糸分裂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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